「もっと優しい旅への勉強会」定例会報告

2004年1月 定例会の報告
平成15年度「バリアフリー化功労者表彰」内閣総理大臣賞受賞に際して
~京成ホテルの取り組み~
京成ホテル企画部長 秋元昭臣氏のお話し

1月19日(月)に「バリアフリー化功労者表彰」内閣総理大臣賞を受賞された京成ホテル・グループの正に推進役であり実際の実施者でありました、秋元昭臣氏(当会会員)にお話しをお伺いしました。
氏のお話しの中にもありますが、内閣総理大臣賞を目標とした訳ではなく、日々の一歩一歩の積み重ねが認められた素晴らしい受賞物語です。

参考記事:
既存ホテルのバリアフリー改修事例 ~ホテルのらくらくバリアフリー~
 (京成ホテル株式会社企画部 秋元昭臣著:第5回福祉技術シンポジウムでの講演資料より)


私が最初に「もっと優しい旅への勉強会」に来ましたのは8年程前で、紙さん(当会副代表)が同期かあるいはちょっと先輩かという時でした。
 今日はその当時の勉強会例会のやり方を行いたいと思います。最初に私が簡単にお話しさせていただきます。皆さんの思ったこと私に質問していただき、私がお答えするという形です。私がお話しすることは本日の資料を読んでいただければお判りになることです。それよりも皆さんが思っていることを是非私もお聞きしたいものですから、その様な形をお願いしたいと思います。(全員拍手で賛成しました)

内閣総理大臣賞の受賞について

それでは、まずこの度の内閣総理大臣賞の受賞への流れについてお話しいたします。

この「バリアフリー化功労者表彰」と云いますのは、5年の時限立法で平成14年度から始まり、今年度で2年目となります。第1回目の内閣総理大臣賞は『新潟県スキーリゾート新井』が受賞され、内閣官房長賞に石川紀文さん(当会会員)の『アクセシブル盛岡』などが受賞されました。皆さんが受賞されたことを聞いたときも、自分たちとはまったく縁のない話と思っておりました。

それでは実際にどのような流れであったかをお話しします。
最初は『全日本聾唖連盟』からファックスが届きました。「ちょっと推薦するからアンケートに答えてください」というような感じでした。そのアンケートに答えたりしているうちに、相手が変わってきました。内閣府が最終的にはやりとりの相手になり、ものすごく細かい事を聞かれるようになりました。建築関係資料は自分達では間に合わないのでゼネコンに聞いて答えたり、寸法を計り直したりして答えなければなりませんでした。又、経営や会社自体の取り組みなど、詳しい話を聞かれました。その内にパタッとやり取りが途切れました。

11月になり、突然「受賞しました」という電話が会社に掛かってきました。この電話は私が社内にいないときに掛かってきましたので、社内では何を受賞して一体どうなっているのか大騒ぎになったようでした(笑)。書類を出すには会社の内諾を得て出しましたし、判子を押す方も「何かやっているな」位にしか思っていなかったのですね。ところがそんな結果となった訳ですから皆半信半疑でした。その後すぐにファックスで詳細が届き、11月27日に表彰式があり、その表彰式にパネルを持ってきて説明をしてくださいとありました。パネルを作るにしても10年間やっていますので、写真などはバラバラになっていますしなかなか集められませんでした。大至急で作り時間的に間に合わないので内閣府に私自身でもって行きました。

表彰式の模様

表彰式当日、全国で83団体がノミネートされ、内12団体が表彰対象となり、11が官房長官賞を受賞し、ひとつが内閣総理大臣賞の受賞ということを伺いました。当日は内閣府に受賞関係者全員が集まって説明を聞き、全員バスに乗って首相官邸に向かいました。5分位の距離ですがセキュリティ等の関係もあるようでした。
初めに官房長官賞の授賞式があり、小泉総理大臣のお話があって総理大臣賞の受賞となりました。その後パーティーがあり、福田官房長官へ順番にパネルの説明いたしました。私共が最初でしたので私が説明させていただきました。表彰時に賞状と何か重いものをいただきましたが、開けて見るまではわかりませんでした。ものすごく重かったので「賞状に付いている額じゃないのかな」と思っておりました。帰ってから開けて見ると大きい立派な盾でした。この盾は今ミラマーレに飾ってあります。写真の総理大臣の右脇に座っているのが京成ホテル飯田社長で、福田官房長官にパネルの説明をしている後姿が私(秋元)です。私たち全員の説明が早かったので表彰式後のパーティーはゆっくりと楽しませてもらいました。料理は非常においしかったです(笑)。
資料には受賞者の一覧表がついております。そこに推薦団体が書かれておりますが、そのほとんどが神奈川県、岐阜県、北海道などの行政です。その中で京成ホテルは厚生労働省扱いとして受賞したのですが、これはとても珍しいことであると話しを伺いました。

私たちは受賞当初、この賞がそんなに重いものであるということを自覚していませんでした。受賞後すぐに事業所のある県庁(千葉県と茨城県)、市役所(銚子、土浦、犬吠、千葉)には、社長と一緒に現物を持って報告に行きました。どこもまさにUD化への取組みを始めている所でしたので、非常に喜んでもらいました。県庁では今こんなことを予算化しているのですとのお話しや、どこの県も市も福祉関係とか街を造り直すお話しを伺いました。その切り口は〝バリアフリー〟ではなく〝ユニバーサル・デザイン〟という言葉を借りて一生懸命取り組んでいる様子がうかがえました。

京成ホテルでのバリアフリー取り組みについて

それでは次に私たちがどんなことをやってきたかをお話します。

まず、皆さんにお礼を言いたいのですが、私たちの会社がそのような取り組みが出来たということは、このような勉強会に出会えたことでした。それから利用者の方に来てもらって、いろいろな話をしてもらいました。利用者の方に話を伺うことが良かったと思います。私たちは話しをしてくれた方のご希望を実現してお返ししようと努力しました。言われたことは何とか出来ないか、今出来ないことは出来るまで待つこと、あるいは出来る方法を考えようとしたことが今回の受賞へと繋がったのだと思います。ですからこの賞は、私たちがいただいたのではなく、利用していただいた方がもらったのだと思います。私たち社員全員、利用者の皆さんの言われることをして来ただけだと思っております。

次にどの様にしてきたかをお話します。
ハード面では平成4年の犬吠埼京成ホテルのアネックス建築がきっかけでした。建物は40年使うので、10 年、20年はお客様に満足いただけるものを作りたいと考えたわけです。高齢化社会の対応をしようということになりました。その時にたまたま草薙さん(当会代表)のお話をラジオで聞き、"これからはこれだ!"と思いました。それから一筋、わき目も振らずでした(大笑)。
アネックス建設工事のことで悔しい思いをしました。何十億もかけての作るチャンスがあったのですが、その時には今ほどに知識がなかったのです。ものすごく損をした気持ちです。だから何かをなす場合には、とにかく知識は必要だと思います。それがないとチャンスをみすみす見逃してしまいます。いろいろなことを知ろう、いろいろな人に意見を言ってもらうということはその悔しさから来ていると思います。

もうひとつ『もっと優しい旅への勉強会』(当会)を紹介されて入会したことがあります。
この勉強会で始めて障害を持った方の話を聞きました。その当時はあまりいい話はありませんで、「ホテルは何をやっているのだ」という声がほとんどでした。そういう中で一緒に話を聞いたり旅行をしたりして、その方の立場になって物を見ることが出来たということは非常にラッキーだったと思います。
京成ホテルの幸運であった点は、障害をお持ちの方、当事者と交流をもつことが出来たことです。皆さんのご意見を聞きながらやってきたことだと考えます。今でも皆さんのご意見をお聞きすることは続けることが大切なことであると思っています。どんなに小さな改修をする時でも、アドバイザーと決めた方に問いかけをし、いただいたご意見を生かすようにしています。

お金が無くても…

次にお金の問題です。会社は予算で動いていますので、最初も今もお金はありませんし、バリアフリーについての認識もありませんでしたので、まったく予算はつきませんでした。どこから始めたかと申しますと、お金の掛からない所です。まず盲導犬を受け入れましょうということになりました。確かにこれはお金が掛かりません。ただし盲導犬についてはまったく知りませんでした。受入については犬の嫌いな人がいるとか、様々な意見がありましたので、盲導犬協会の方に来て頂いて役員会でデモンストレーションを行い教えてもらいました。その後に支配人や役員会で認めてもらったのがその始まりでした。
次にバリアフリーといいますと、車イスのお客様ということになりました。車イスを買いたかったのですが、10年前は高くて買うことが出来ませんでした。廃棄処分の車イスがあるということで7台もらってきました(笑)。それを自分たちで修理して各事業所に配ったのが始まりでした。その車イスを使って自分たちで館内を乗って歩いてみますと行けない所ばっかりだったのです。スロープなどを買うか、作るか、止めるかしかない、「どうしよう」ということになり、それじゃあ自分たちで作ろうということでベニヤ板で作りました。その後改良を加えて滑り止めを付けたり、脇に落ちない工夫をしたり、ゴムを貼ったり、どんどん進化して行きました。これらは買ったものではなく、自分たちで作ったものですからいくらでも手直しができたのです。
トイレの手すりなどもホームセンターで買ってきた部品で作ったものです。それは自分達で寸法を測って計算して作らなければなりません。取り付ける位置も全て自分で考えるしか無い訳です。自分たちでは使い方が判らないので使う人に聞くことにしました。その繰り返しで作ってきました。写真にカーテンのついたトイレがありますが、これは土浦で言う通称『1号トイレ』で一番最初に作ったトイレです。これを作る前は普通のトイレの入口に『車イスでトイレ使用中です』と紙に書いて引っ掛けてトイレ全体を使ってもらいました。次に利用者の方に「一番奥をすこし広くすればいいんだよ」といわれ、いままでの扉を取ってしまい大き目の扉をつけました。車イスが入るとお尻が見えちゃいますのでカーテンでぐるッと囲いました。これは男性トイレの場所に作ったのですが男女兼用で利用してもらいました。
車イスのためのトイレがどの位の広さが必要なのか等々がわかってきましたので、次に直す時にはこれまでのことを基にして手直し修正していったのです。私はこれまで15から20のトイレを作ってきましたが全部形の違うトイレです。業者の人にお願いする場合でも、寸法の指示から、材料の指示、注文を詳しく指示が出せるようになりました。メーカーには部品の供給してもらうこと、アドバイスは受けることができます。このことをフルに利用させてもらいました。ですから1月24日のお祝い会には複数のメーカーのかたに来てもらいます。メーカーの方にいろんなことを教わっていますし、いろいろなメーカーの機器を使っているからです。八方美人と言われますが、皆さんと仲良くして、皆さんからいろんな話しを聞くことをずっと続けてきていることが手作りということです。

作る上で安全ということを一番に注意を払わなければなりません。安全なものを作るためにも知識が必要です。そこで住環境コーディネーターの第1回目の試験を受けて3級の資格を取りました。それから福祉機器展には何度も行きましたし、飯田橋の展示場へも通いました。自分たちは実物を持っていませんし、何も知らないわけですから、展示会に行って実物に触らせてもらったり、話しを聞いたりしました。その頃は子供がおもちゃを欲しがるように「あれが欲しい、これが欲しい」と言っていましたね(笑)。

良いモノはどんどん取り入れる

物はありませんが知識は高めることはできます。スロープなどもいいスロープがありますと、自分の作るスロープに〝良いとこ取り〟をして自作することの繰り返しでした。〝良いとこ取り〟というのは、多岐にわたっています。例えばサービスについてもそうですが、京成とも関係あるディズニーランドの人から「Happy and Happy」と教えてもらいました。お客様がハッピーになればサービスする側もハッピーになるといういことで、それがまたお客様にかえるいい連鎖が起こって最終的に一番いいことになるのだよとの話しです。それも〝いただき〟でした(笑)。それからJALの『プライオリティ・ゲスト担当』という言葉も特許じゃないんだろうからと〝プライオリティ・ゲスト担当者〟を作ろうといってもらいましたし、ANAの『スカイ・アシスト・デスク』のアシストっていいんじゃないのと言って(笑)、そういうのをちょこちょことパクリの連続です(大笑)。

この〝良いとこ取り〟も表彰の対象として認められました。スパイラル的に良い結果を生んで行くような取り組みをしたことは、お金を掛けなくてもできますよということを世に広めたいという内閣の意向と一致したのじゃないかとも思います。(笑)

ソフトの重要性

もう一つのソフト面のお話です。最初はとにかく〝バリアフリー〟という言葉しかありませんでしたが、その言葉さえ説明しないと解ってもらえませんでした。今ではバリアフリーといいますとユニバーサル・デザインでしょうと切り返されるくらいに普及しています。始めの頃はホテルの玄関のスロープ、トイレなど一部分を局所的にマルを付けて行く感じでした。今はホテル全体をおおきなマルの中に入れて考えているといえます。10年経って全部の事業所がそうなりました。駐車場から入ってきて、どこに行くにしても車イスで行けるように、その一部が犬吠埼で温泉を掘って泳ぐ施設を作ろうとした時にもやりました。犬吠埼の課題は車イスで浴槽に入りにくいことなので、この賞をいただきまして、ちょっと予算をもらいましたので(笑)、今期は何とか浴槽に入れるものを考えています。前に浴槽の中にスロープを作ろうとしてテストしたんですが、スロープがどうしても浮きあがってしまって使い道にならなかったので(笑)、違う方法を考えています。

ユニバーサル・デザインという言葉を借りて、私達もやってきたと言う所があります。それがホテル全体に広がって、新しいホテルであるミラマーレを作る時に活かしたと思いました。ミラマーレを作る時は今までのホテルの悪い所をやめて、良い所を取り入れようと作りました。お金の関係、デザイナーなど様々な絡みがありまして満足できる物ができたとは思っていません。でもホテルは5年位すると又改修しますから、順次やっていってしまえば良いなと思っています。この考え方が「できる時刻(とき)まで待つ」ということです。

従業員の教育

ホテルに限らずですが、誰にでも笑顔で挨拶ができれば良いかなと思っています。まず挨拶をして言葉をかける。以前はそれが出来なかったので社員研修を行いました。社員研修会には『もっと優しい旅への勉強会』から草薙さんと成瀬さんに来てもらいました。ミラマーレの前のバリアーいっぱいの古いホテルで第1回目の研修会を行い、その後は毎年1回実施しています。必ず障害を持った方や、その当事者の方に話しを聞かせてもらうことにしています。地域とのつながりを持つという事もあり、社協に行って推薦してもらうこともしました。私のずるい所は一回推薦してもらった方には、次月はアドバイザーとして来てもらい意見を伺い、次の年は面白いからもう1回講師をどうですかと、ずーっとアドバイザーを増やし続けています(笑)。そうするとそのお友達も来てくれ、一緒に車イスでアプローチ時間を計ってもらうなどゲーム感覚で楽しんでもらいました。これが地域と一緒に推進して行こうということだと思います。

次に現場の人達が、自分の職場に何があるかということを意外と知らないものなので、その現場に出向いて「皆さんの所にはこんなものがあって、こんな風に使えるのですよ」と説明をして歩きました。洗い場のおばちゃんから厨房、フロントは勿論ですし、人を選ばないで一度説明会に来た人は来ないでくれと言って、体験者を増やすことを現場で実施するようにしました。ホテルは人が変わるのでそれでも中々周知することは難しいことでした。全体の研修会は今年で8回目となります。現場の説明会は途中抜けましたので今年で6回目になります。

情報発信の大切さ

ある時、利用者の方の助言でトイレを改修し、その方に見てもらいました。「まあ、使えるんじゃないの」と言われてそのままでいた所、叱られました。「作って何もしないというのは、作らないより悪いんだぞ」と。「車イス用トイレがあることを隠している」という言い方をされました。それは情報を発信しろということだったのです。不安を抱えている人もいるし、知っていれば便利なことが多いのだから、何でもいいから情報を発信しろといわれたのです。
実は「こんなもんでいいんだろうか」、「本当に使えるのだろうか」、「来て使ってもらって文句言われるのであれば、言わない方がいいんじゃないか」と不安を抱えているのは私達だったのです。今でもそう考えているホテルや旅館は沢山あると思います。ですから『設備が整いませんのでお断りします』という口実になるのです。そうではなくて、とにかく来てもらって意見を言ってもらう、との考え方がここから始まったのです。そこから情報の発信の大切さを知るようになりました。
発信方法のひとつとして『バリアフリー・ファイル』とか『バリアフリー・パンフレット』を作ってどのようにバリアフリーに対応しているかを表現しました。ホームページにはバリアフリーのページを作って情報発信を行っています。とにかく情報を発信しろ、発信した以上は返ってきた情報に対してきちっと対処しようと進めてきました。いただく言葉には褒められることなんてありません。クレームがきたらこれは〝いただき〟という姿勢が大切だと思います。その繰り返しが大事だと思います。

一昨年は社内の全社的なバリアフリー研修会に、ニュースリリースして誰でも来てくださいと地域の人に呼びかけたのですが誰も来ませんでした(笑)。今度は「受賞しました。一緒にやりませんか!」として呼びかけてみようと思っています。地域の人に広げるということは、点ではなくてホテルから少しずつ根を張って行きたいと思っています。根を張ってゆく中で社会人と一緒に小学校3、4年生くらいまでの子供たちに遠足を兼ねてホテルに来てもらって、施設見学をしてもらい、車イスをつかったレースなどをやってもらったら面白いなあと思っています。そんなことを企んでいるのですが、この企画をどこにもち掛けてどうすればいいのか判らないのですが、市役所などに聞いてやってみようと思っています。

バリアフリーの営業効果は?

最後は、これらのことをやってきて営業成績に貢献できたのかという、いつも投資効果の話になります。私はバリアフリーでなかった時には、お客様は「あそこはバリアフリーじゃないよ」と言って来てくれませんでした。ですからやったからどうのこうのではなく、やって来なかったのかということが大切だと思います。サプライ・ファースト、ちょっとしたことでも「やっちまう」ことですね。それで情報を出して、クレームは処理して次に進むとことが重要だと思います。
今ではバリアフリーと言うこともひとつのサービスの商品だと思います。バリアフリー旅行などと同じで、ホテルがバリアフリーですよということは大きな商品のひとつであり、それが無い所にはお客様は来てくれません。お客様が私達のホテルに来て「あそこのホテルには車イスがなかったよ」、「あなたの所には車イスが2台あるね、もう一台増やしたら」とおっしゃいます。このようにお客様が変わってきていますし、絶対に元に戻る事はないと思います。

これまでお話ししましたように、お金をかけなくて実用的なことはできます。ですからそれをしてゆけば良いと思いますし、その際に安全と言うことは絶対に注意を払う必要があります。
教育をしてこれまで行ってきたことによってどうなったかと言いますと、今日ラジオで私が思っていたことと同じことを言っていたのですが、「皆を愛しなさい」だと思います。誰でも人に優しくしようと言う気持ちは持っていると思います。例えば今ここで子供が転んだら、誰でも駆け寄って起こすではないですか。それが車イスの人だったらできないとか、目の悪い人だったらできないというのは、その人が一歩踏み出せないだけだと思います。皆が持っているものを出せれば、バリアフリー化は出来てしまうと思います。従業員が持っている優しさが、そのままストレートに出せるようにと願っています。よく判らなかったら「どうしましょうか」だけでも尋ねなさいと、「こんにちは」「さようなら」「いらっしゃいませ」「どうしましょうか」だけは言いなさいと教えています。あとはお客様が教えてくれるのだから。それをやらないからコミュニケーションが取れないのです。手厳しい苦言をいただくことも沢山ありますけれども、それはしょうがないです。そのかわりすごく感謝してくれる方もいらっしゃいますし、話が弾む人もいます。持っている優しさをとにかく行動に移しなさいということを今やっています。それは教育しかないと思います。

投資効果がどうなるかと言いますと、進めるということは従業員の教育もありますし、まわりの人達にも効果を及ぼします。私が東京ディズニーランドの話を聞いて波及効果があったと同じように、私たちの取り組みは他への波及効果があると思います。そのような形で充分に投資効果があると思いますし、実際的に今までいなかったお客様が間違えなく増えています。それらの人々が会議や大きな団体で来てくれることも増えています。ですから「そんなことやってどうなるの?」ではなく、「やったらどうなんだ」と考えて進めるべきだと私は思います。

一番簡単なのは、お金を掛けなくても優しい心を持って見ているだけでも「見守り」が出来ます。それから「目を合わせて頭を下げる」事であっても良い訳ですし、「エレベーターのボタンを押す」事や、「ドアを開けてさあどうぞ」だけでも充分なのです。ほんのちょっとしたことであっても、構えてしなくても充分に役に立つのです。私たちはサービス業ですので特に大切にしようと思っていますが、これは商売抜きにしても同じことだと思います。

聴覚障害のお客様への対応

私達のホテルで一番弱いところは聴覚障害のお客様への対応でした。手話の出来る社員は現在新しいミラマーレにYMCA卒業で入社した鶴田というひょろっとした男だけで、彼を中心にして手話を勉強しています。その他はどうするかと言いますと、私もそうなんですがメモ用紙をいつも持っていれば対応できます。1月24日(総理大臣賞受賞お祝いの会)には、京成ホテルで改良した非常に安いメモ帳を作りまして、スタッフに配って対応しようと思っています。楽しみながら、自分が持っているものを出すことによってバリアフリーができるのではないかと今私は思っています。

聴覚障害を持っている皆さんへの対応は一番駄目だったのですが、その一番駄目だったお客様の団体から今回推薦いただきました。聴覚障害を持っている方は、どこのホテルの誰々さん、どのデパートの誰々さんなどと個人名を知っています。そんな中で、何もできない京成ホテルを推薦いただけたのは、「駄目は駄目なりに結構やっているんじゃないの」と思っていただけたからだそうです。どこかで誰かが私達の姿をみているのだなという怖さを今つくづく感じました。
ありがとうございました。(拍手)

笑いあり、身振り手振り、角の折れ曲がった紙の束メモなどを見せながらお話しされました。
この後この日参加された皆さんが自己紹介と感想を一言と、また質問があれば秋元さんに
答えていただくことになりました。
スペースの関係で一部省略させていただきました。ご了承ください。(敬称略)

室井:ANAセールス&ツアーズ勤務。10年前にこの取り組みに気付かれたとのことですが、銚子の京成ホテル建設時に気づかれたきっかけは何ですか。
秋元:バリアフリーについてはまったく考えていませんでした。建物のことも自分は不自由していませんでしたので、まったく考えてもいませんでした。建設時に気付いたのは、私の親が歳を取ってきたこと、自分も歳を取ってきたこと、建物は40年持つけれど、その時自分はどうなっているかなと考えた事です。身近な事からだったです。

紙(かみ):昔日本航空で乗務員をしておりました。ホテルはバリアフリーになっているとのことですが、ホテルまでのアクセスについては?(副代表)
秋元:バリアフリー・パンフレットに最寄駅情報を載せております。目の不自由な方や手足の不自由な方、ご高齢の方、耳の不自由な方に対してお申し出くださいと記載しています。駅からホテルまでどうするかはこれからの課題であると思っております。

重岡:福岡から出てきております。地域への呼びかけはとおっしゃてましたが、社会教育がいいと思います。教育委員会の社会教育が一番よいと思います。
秋元:社会教育のアドバイスありがとうございます。後で詳しく教えてください。

沓名:アジアにおけるバリアフリー旅行現地オペレーション会社メディカル・リンクス社勤務。
バリアフリーについての理解をしてもらうためにどのような努力をされたか教えてください。
秋元:私(秋元)が言ったのでは納得してくれませんので、その人が納得する人を連れてくることです。一番良いのはお客様からのご意見やクレームをきちっと取り上げることです。バリアフリー化する事によって儲かることを示すことも重要です。

寺村:デザイン事務所を経営し、沓名氏とパートナーとなってメディカル・リンクス社を経営。
現在勉強中ですので、これからいろいろと学んで行きたい。

小野:当勉強会の会計担当です。事務局の置かれているのが私の事務所になっています。私が現役であった時、秋元さんがお見えになりましたのでこの勉強会を勧めました。それから歩まれ、ご努力から今回の受賞に至ったと思います。改めてお祝い申し上げます(全員拍手)。これからの10年、20年のビジョンをお聞かせください。
秋元:これまでは自分たちのホテルの中だけやっていれば良かったのですが、この表彰以後それだけでは済まなくなってきた。それをどう果たしてゆくかが課題です。地域を含めて考えてゆきたい。自分自身の老齢化もふまえ、楽しみながらやってゆきたい。

文殊川(もんじゅがわ):全国精神障害者家族会連合会(全家連)に所属しています。全家連所有のホテルを日本で最初に作った宿泊施設があり、やや施設っぽいので手直しを行っている所です。従業員に秋元さんから是非お話をと思っておりますのでよろしくお願いします。皆さんの勉強会会報は私たちの東京事務所ダイレクトメール発送施設から発送しています。

山田:ユニバーサル・デザイン・タクシーを運行しているユニネッ社勤務。今回の表彰団体のひとつに肥後タクシーがあるのですが、担当者の方は総理大臣賞がほしかった様でとても残念がっていましたが、「京成ホテルでは相手が悪すぎます」とお話ししました(皆笑)。私の仕事先と、勉強会仲間で先輩の秋元さんとダブル受賞でとても嬉しいです。

木村:勉強会会員の木村です。去年まで会報担当をしておりました。千葉の京成ホテルは見学し、銚子、水戸、土浦は泊まりました。お願いしたことは素早く対応してくれ、これが他の所にはない素晴らしい所だと思います。これからも益々発展されることと思います。

神田(こうだ):私は子供が障害を持っており、親の立場からについて勉強したくて「もっと優しい旅への勉強会」に入会しました。また秋元さんとキャンプに行きたいと思っています。

丹羽:紙さんの数年後輩になりますが、同じ会社に勤務しておりました。紙さんに首に縄をつけられてこの勉強会に連れて来られました。私も息子が10年程前から車イスの生活をしていますので、教えてもらいたいと思い参加しています。秋元さんは10年前からですので、丁度我が家と同じ時系列です。息子の住んでいる今の家はバリアがないのですが、時々帰ってくる私の家はバリアだらけです。秋元さんが取り組まれたようにやってゆきたいと感じました。

吉田:事務局の吉田です。私事ですが、昨年ミラマーレで挙式をあげさせてもらいました。チャペルもバリアフリーになっているので、90歳のおばあちゃんや片マヒや車イスを使っている親類がいますので、安心して対応してもらいました。北海道定山渓温泉のお話がありました。

松本:JTBに勤務しています。勉強会のプログラム委員をしています。来月には昨年度の内閣総理大臣賞を受賞された新井リゾートへの旅行を考えています。3月は12日に東洋大学の高橋儀平先生のお話を伺います。是非お友達と共にご参加ください。

小野崎:栃木、今市市から初めて参加させていただいた、新関東観光(旅行会社)勤務。
地域で何か貢献できないかなと思っておりました所に、素晴らしいお話を聞かせてもらい感動しております。地域で必要とされる会社になりたい思っており、帰りましたら社員にこの話をさせてもらいたいと思っています。

上田(かみだ):栃木県今市市で、楽しく来てもらいたいと思いからNPO旅ネット陽々を立ち上げました。ホテル、旅館ではお客様が来ないと嘆いているのが現状ですが、実際には来たくても来れないのではないかと考えます。(奥様はタイの方で、一緒に里帰りした時のタイの人々のバリアフリーな対応の体験を披露されました。)タイはバリアだらけですが、人々の対応は優しい国ですので、栃木県もハードとソフト両面でバリアフリーに取り組みたいです。
秋元:37年前に入社した時の最初の勤務地が栃木県の那須でした。家内は栃木の人間です。まんざら縁もないこともありませんので、これからも是非よろしくお願いします。

山中:栃木から参りました。栃木には日光や那須など観光地があり、来ていただきたい、見ていただきたいという思いから、二足目のわらじであるNPO旅ネット陽々を立ち上げあした。教えていただきたい事が山ほどありますので、よろしくお願いいたします。
ホテル、旅館のマル適マークは年に数回定められた防災訓練を義務付けられているのですが、障害者の方の誘導はどのようになさっているか教えてください。
秋元:京成ホテルでは申告してくれた方には、フロントで台帳につけますので、真っ先にそのお部屋へ行く事にしています。防災訓練で特に障害を持っている人を想定してはやってませんが必要だと思っております。誘導灯がとても重要で、ミラマーレは誘導灯がフラッシュライトになっています。土浦はその後改修してフラッシュにプラスして音声付にしました。全ホテルの客室のドアに避難経路図に手で触ってわかる図を設置することなど、大きな課題と思っています。

野見山:日興トラベルに勤務。高齢者を対象とした旅行会社で、今現在参加されているお客様の平均年齢は70歳を超え、加齢により歩行が困難な方が増えてきました。そういった方々が参加できる旅行の企画を昨年から担当しております。目指しているものとはまだ程遠い形です。介助者同行のお客様だけのお申込みを受け付けている状態です。
京成ホテルでは介助者同行されないお客様の受け入れはどうしているのか教えてください。
秋元:受け入れは時に、基本的には受け入れ側の状況について嘘を言わないようにしています。無い物は無いし、駄目なものは駄目と説明し、このような対応をしますとお話します。車イス用のトイレは特にありませんが、トイレを貸し切りにしますので、介助の方とゆっくり使ってくださいなどとお話します。そうするとお客様は笑ってしまって「それでは言ってみっか」とおっしゃって来てくれます。お客様とコミュニケーションが取れれば成功と言えます。

冨吉:この4月にJTB入社、柏支店に勤務。学校関係の営業担当。学生時代からバリアフリーの旅に取り組んでいます。業務のかたわらホノルル・マラソン・ツアーや韓国プサンへ障害を持った方の旅行を企画しました。アジアに障害を持った方の参加できるツアーを作ってゆきたいと思っています。学校関係の修学旅行のセールスが主業務で、特別学級に対する配慮を考えている学校がありましたので、ここぞとばかりくらいついております(笑)。皆さんのご意見を伺って成長してゆこうと思っております。

草薙(当会代表):1月24日にミラマーレでの受賞お祝い会の発起人の一人です。当初30名くらいの出席者と言ってましたが、100名を越えと聞き、先程うかがったら170名を越えているとのことです。(どよめき)《注:24日当日最終的な参加者は230名でした》アナハイムの新しいディズニーのアドベンチャーランドに行った友人にバリアフリー状況を伺いました。車イスの方が沢山いて20名に1名程の割合だそうです。西海岸の施設には年間1300万人、オーランドには1200万人訪れるそうです。東京のディズニーランドには1700万人、ディズニーシーには800万人と年間に2500万人の方が訪れるそうです。沓名さんがアジアお話しをされましたが、私も最近アジアのことを考えております。昨年半ば過ぎに日本でアセアン10カ国プラス日本、中国、韓国で東アジア共同体を作ろうという会議が開かれました。日本にも事務局を置き仲間に入れていただくという気持ちで、25年先を考えてやるそうです。そう言う意味でも昨年神田(こうだ)さんがタイ旅行を企画された時に提案された、中古でもいいからリフト付バスを贈ろうという気持ちは持つべきだろうなあと思います。お話にユニバーサル・デザインがありましたが、私はユニバーサル・デザインとかバリアフリーとかあまり言葉にこだわりません。3月に話される東洋大学の高橋儀平さんは建築が専門なのですが話していただきます。この頃考えていることのひとつに、サステイナブル・ソサエティという、環境のことで言いますと、持続可能なと言う意味です。次世代に続くという意味でもあります。いわゆる地球環境のことを言われますが、社会環境とか文化の環境も入っていると思います。そのように次世代に繋いで行くにはどうしたらよいのかを考える必要があると思います。説明資料にすのこを引いてあるものがありますがその説明をお願いします。
〝スパイラル〟という言葉はどういう所から思いつかれたかを教えてください。
秋元:〝スパイラル〟についてお話しします。私はどちらかといいますと工学系なので、スパイラルの形から言葉を思いつきました。常に動きながらより高い所にいる状況を〝スパイラル〟といっています。らせん状の形ですね。感覚でつかっていますので、適切か不適切かはちょっと自信はありません。
すのこの写真ですが、犬吠埼京成ホテルの407号室で、バリアフリールームです。普段はこのすのこはありません。ドアは手前に開いて180度折れるように工夫してあります。それで車イスが寄り付けるようにしてあります。車イスの座面と同じ高さにすのこをはりました。普段は普通の部屋として使うことができます。大切なことはドアを180度手前に開くようにして、車イスが寄せつけられるようにするのがコツです。


皆さんの顔にはまだまだ沢山お聞きしたいと言っておりましたが、時間の関係で親睦会へと場所を移すことになりました。秋元さんの熱のあるお話しは2時間ではまったく足りなかったと実感しました。ありがとうございました。

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