「もっと優しい旅への勉強会」定例会報告

2002年9月 定例会の報告
「おからだの不自由な方にも参加できるパッケージツアーへの取り組み」~ゼロからのスタート~

9月の勉強会は「おからだの不自由な方にも参加できるパッケージツアーへの取り組み・ゼロからのスタート」というタイトルで、全日空ワールド(株)カスタマーサポート本部ハローツアーサポートデスクマネージャー、室井孝王さんにお話していただきました。
室井さんは当会の運営委員でもあります。 車椅子を利用していたり、あるいは高齢で足腰の具合がよくなかったりするとパッケージツアーの参加は無理なのでは….と考えがちです。でもこのお話を聞けばきっと考え方も変わりますよ。
9月25日水曜日 JATA会議室にて19時5分開始 参加者は約35名でした。

室井さんのお話

旅行というのは、「既製服」や仮縫いをする「オーダーメード仕様」などいろいろな形があすが、一番一般的で売れているのが既製服タイプ、商品名で言うと「アイル」「ルック」「ホリディ」などです。また旅行会社にも障害者旅行専門に取り組んでいるベルテンポやJTBの「バリアリー旅行プラザ」近畿日本ツーリスト・クラブツーリズム「バリアフリー旅行センター」といった専門部署のある会社も存在します。そんな中で私ども全日空ワールドも25年前から「ハローツアー」という旅行を作って一般に販売しています。

サポートデスクのスタート

昨年の4月「サポートデスク」はスタートしました。部署の名前もなかったので私が勝手に名付けて使っています。障害をお持ちの方、ご高齢の方の申し込み時からのサポートを行います。
このデスクができる前はクレーム処理と同じ様な対応をしていました。たくさんのお客様の中で障害をお持ちの方がどのくらいいらっしゃるのかは統計がありません。でもとにかく増えており、昨年度は一昨年度の1.5倍に増えております。
昨年4月に引き継いだときには引継ぎ資料は何もありませんでした。唯一の資料は、JATAの旅行会社に対するアンケート内容とその結果のデータ資料でした。そこでまずは障害をお持ちの方が航空機を利用するにあたってのことを勉強しなくてはと思い、「全日空スカイアシストデスク」にいき、教えていただきました。
(※スカイアシストデスク:ANAのお体の不自由な方へのサービスセクション)

データベースの活用

同じことを何度も聞くのは忙しい中迷惑をかけると重い、自分なりにサポートデスク用のデータを蓄積をしていくことにしました。更に航空機だけでなく旅先の現地情報もどんどん蓄積をして、日々の変化にも対応してアップデートしています。私は凝り性なので自分なりに整理して、データベースを作っています。現在、サポートデスク情報は200件ぐらいです。たとえば「車椅子」というキーワードを入れると、それに関するデーターが出るようになっています。他に現地情報、健脚度情報などがあります。

人との出会い

またバリアフリー旅行に関する本も読んで見ましたが、最初はあまり理解することができないでおりました。しかし、今読み返してみますと、同じ内容に触れても得るところが違うのです。出会った人々にも多くのことを学ばせていただきました。ほんの一部の方ですがご紹介いたします。

京成ホテル・秋元さん
設備や予算のないものねだりはしない。とりあえず、ニーズを満たすように工夫すること。などを教えていただきました。
JTB・相良さん
コミュニケーションカード(後述)作成にあたりアドバイスをいただきました。
相良さんに見ていただいているから大丈夫と安心しています。

実際のお話ではもっと多くの方のお名前が挙がっています。

手配の実際

私は直接旅行に参加されるお客様とおあいすることはまずありません。旅行代理店の担当者とのやり取りがほとんどです。ご高齢や障害をお持ちのお客様が最寄りの旅行代理店にハローツアーの参加をご相談されたときに私のところに話や情報がくるのです。

予約時の対応

代理店の窓口担当者に障害の状況を詳しく聞いてほしいというのは無理な話です。まず聞いて欲し事が車椅子使用者であったら、過去に車椅子で海外に旅行にいかれた経験の有無です。もし経験があれば様子がわかりますので、説明の仕方が違ってきます。
現地の情報はできるだけ詳しくお知らせするようにしています。たとえばベルサイユ宮殿では入り口まで厳しい石畳のスロープがあり、入口ではエレバーターで上階に行き見学することができることや、車イス用のお手洗いないなどです。その他の観光地でも十分な情報をお知らせして、お客様にできることできないことを出発前に承知してもらい、最終的に訪問地でその判断していただだくようにしております。
また一日の旅程の時間の流れを表にまとめたものを用意しこれもお客様に送っておきます。そうするとお客様自身が紙上で旅行の疑似体験ができ、どの日の日程が厳しく、どの所でトイレ休憩がとれるなどの気になることが判り易くなります。情報が十分に手元に届くことで、その日の体調、疲労度も考えて、ここでは入場せずに景色を楽しもう、などと判断をしてもらうことができます。

ツアー中のお手伝いについて

よくお客様が「歩けます」といいますが、これはお客様ご自身の速度で「歩ける」ことであり、実際の旅行行程中では「歩けること」とは、「ある一定のスピードで歩くこと」であり、そのスピードが保てませんとお客様に提供しなければならない観光地をご案内できなくなり主催旅行では不履行となってしまいます。
従って、お客様にはそのスピードが無理な場合にはお待ちいただくか、待機いただいたりバスに残って先回りしてもらったりと提案してご了解をいただいてから参加してもらいます。
お客様は旅行先で旅行会社の係員が介助や手伝いをしてくれるのではないかとお考えになっていることが多くあります。これも現地で摩擦を生じさせますので出発までに係員の出来ないことは文章で明確にご説明し了解してもらってから参加いただいています。表現例としては「現地ガイドは観光地のご案内、同行添乗員は旅程管理が主業務であり、参加いただいたお客様全員に公平にご案内しなければなりません。従いまして個人的、専任的介助はできませんのでご了承ください。」です。
添乗員との打ち合わせでも「最初二日間で我慢をしてお客様とのスタンスを作ってください。」といっています。最初の2日間で障害のあるお客様とのスタンス、障害をお持ちのお客様と他の参加者との関係ができればスムーズな旅行になります。

コミュニケーションツール

次のツールですが、またこれは私としてはかなり力をいれて作成したのですが(笑)聴覚障害の方に利用していただくための「コミュニケーションカード」です。
(回覧)B6版台の厚めのカードに旅行のシーンで係員や他の人とのやりとりの言葉を記載したものです。バスを降りるときに「トイレ休憩です」「写真撮影ポイントです」集合は○時○分です」や、ホテルで「夕食は○時です」「明日の朝は○時にXXXに集合です」といったものです。
これを見てもらい指さししてもらった手話や筆談が無理な場合にコミュニケーションを計る目的に作ったものです。添乗員付のコースの日本語のもの、フリータイムなどの場合の現地言語(英語、中国語、少しフランス語、ベトナム語)などがあります。使っていただいた方からはこのカードはたいへん好評で喜んでもらっています。
旅行に出掛ける前に出来るだけ詳しい情報をお客様に提供し、旅行会社として出来ることと出来ないことを明確にご案内し、最終的には現地でお客様に選択してもらうこと、お客様との摩擦を減らして行くことが大切なポイントと思います。ただ、大丈夫、何とかなりますではいけません。そのためにも現地の情報などは常に新しい情報に更新して提供してゆかなければなりません。

さいごに

最後に雑感です。会社の中ではまだまだお体の不自由に対する知識や何を手配しなけばならないかなど浸透していないのが現状です。
ですから、手配担当者にはより具体的に説明し、結果的に手配先である現地のスタッフの理解につながる説明をしなければ準備してもらいたい手配がなされていないことになってしまいます。たとえばホテルに対して車イスの幅が60センチなので、ドア幅が70センチ以上の部屋を手配してほしい、と説明しなければどんな部屋を確保したらよいのか伝わりません。また、accessibleroomを依頼してもそれぞれのホテルによって施設内容が統一されていませんので、バス・トイレの手摺りが必要なのか、ロール・イン・シャワーが必要なのか、ハンド・ヘルド・シャワーが必須なのか、細かい所も詳しく依頼をする必要があります。単にaccessible room手配では、お客様にとって使い勝手がよくない部屋となってしまいます。
次にお客様に対してですが、「旅行会社の係員が何とかしてくれるだろう」と思っている方には明確にお手伝いが出来ないこと、同行者の介助だけで移動、観光、バスの乗り降りをしてもらうことを文章で説明しなければいけません。サポートデスクとは、お客様と旅行会社の間の「通訳」のような仕事と思っています。そして、成功してお客様に喜んでいただいた時には、携わったスタッフにも必ず伝えます。
ご満足いただけた旅行をした方からはお礼状をいただくこともあり、とても励みになります。

質疑応答

Q:サポートデスクの送客数は何人ぐらいですか?また年齢層は?

A:月に10人から40人ほどで、同行される方はその2~3倍いらっしゃることになります。高齢の方が3割から4割で、若い方には先天的な方が多い傾向があります。車イス利用の方の単独参加は今までありません。耳の不自由な方だけのご参加はかなりあります。

Q:サポートデスクのことは外部にPRしていますか?

A:特にしていません。パワー的にも無理ですし、お客様の状況は千差万別ですので絶対に参加していただけるとは思っておりません。 他社では「Bさんの手配の旅行だから」というような固定フアンもいるようですが、当社ではそこまではまだまだ出来ません。 申し込んで引き受けてくれるのが当社だけだったというような場合が多いのが現実です。

Q:社内での研修や教育はどうなっていますか?

A:半年に一度の集中研修に私も参加させてもらい話をしています。特に添乗員に対しては新しい情報を提供してもらためにレポートを見せてもらっています。 ベテラン添乗員でもお体の不自由なお客様と同行したことがない場合は、その知識が得られません。障害を持っているお客様に同行する添乗員には必ず情報提供をお願いしています。

Q:障害のある人が参加したツアーで他のお客さんからのクレームはありますか?

A:たまにはあります。あんな人が参加するなら行きたくなかったなどです。ありがたいことに、当社ではその場合は会社として旅行前にそのようなご案内はしないこと、お客様の情報は守秘義務がありますと対応してくれています。 どうしても平行線になる場合は、第三者機関であるJATA等や消費者センターへ相談されることを薦めています。それらの機関でも同様に対応してくれております。なんでもかんでも参加オーケーということではなくてお客様にとって、ランド・オペレターにとっても、そして旅行会社にとってもお互いに歩みよってもらい、調和をとってこれからも進めて行きたいと思っております。

室井様 お忙しいところありがとうございました。

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