「もっと優しい旅への勉強会」定例会報告

2002年5月 定例会の報告

5月の勉強会は今までテーマに取り上げられることがなかった「精神障害者と旅行」というテーマで行われました。精神障害は色々な障害の中でも、障害への理解が一番遅れているともいわれてます。今回は「全国精神障害者家族会連合会」(全家連)の田所裕二さんにおこし頂き精神障害の基礎知識と旅行に関するお話をして頂きました。
5月23日19時開始。参加者は33名でした。

田所裕二さんのお話

全家連の田所です。現在は、組織管理の仕事が中心ではありますが、もともとはソーシャルワーカーとして活動をしてきました。 ところで、精神障害といいましても、その概念はなかなか明確ではありません。障害、病気の区分とは、一般で言うメンタルヘルスとは、など分かりずらいというのが本音でしょう。また、旅行に関しては、一般のツアーや個人旅行をしている方々も多いでしょうし、家族・友人たちや施設の旅行にも参加しています。つまり、予想外に「旅」に関する問題視が少ないようにも思えます。ただし、「余暇や楽しみ」の部分ではまだまだ把握しきれていないとも言えます。

次に、精神障害に対する国の政策や考え方を見てみましょう。現在、日本には204万人の精神障害者が居るといわれ、そのうち33万人が入院をしており、その3分の1は受け入れ体制を整えると、退院して地域生活が出来る人たちとされています(社会的入院)。また、手帳制度(精神保健福祉手帳)も導入され、約20万人の人々が取得しています。いままで医療の対象と思われていた精神障害者が、やっと福祉サービスの対象として認知され始めています。しかし、他障害者の手帳制度と異なり、交通運賃の減免制度などの優遇サービスが少なく、手帳所持者も微増に留まっています。そんなこともあってか、行政や関係事業所などにもニーズが少ないと判断されることになってしまいます。加えて、企業における障害者の「法定雇用率」の算定基礎にも精神障害者は含まれず、就労機会の不均衡が生まれています。このことは、企業内にはある程度の「精神障害者」が内包されており、障害概念が不明瞭な時点で雇用率にカウントされると、制度自体が破綻するという事業所サイドの考え方が反映されているのでしょう。

一方で、近年精神医療や精神保健の面では、日本の技術は飛躍的に進んできました。「薬物治療」や各種「療法」など、さまざまな取り組みが進み、成果が期待される状況です。「精神科クリニック」も地域に増え、風邪で医者にかかるのと同じように、気軽に適切な医療(治療)が受けられる機会が増えてきました。 ところで、こころの病(精神障害)は、言い換えると「生活障害」の側面が強くあります。当人も病識が弱く、社会の理解がなく、社会資源とのつながりが弱いことから、孤立する状況が発生します。この結果、不幸な「事件」が起きることにもつながります。精神障害者が係わる犯罪は、家族など身内が被害者になることが多く、外に向かっての犯罪は以外と少ないとされています。 昨年の「大阪池田小事件」をきっかけとして、心神喪失者等に対する新たな処遇制度の創設が話題にていますが、当事者間でも「罪は罪として処罰し、精神障害者のサポート制度の充実は別問題」と言う意見も聞かれます。こういう時こそ、全家連が「精神障害者に対する正しい知識と啓発」に取り組まねばなりません。九州でのことです。ある小学校で、交流授業として地域の障害者施設を訪問することになりました。しかし、その施設が「精神障害者」施設であると分かった途端、反対意見が出されたそうですが、施設や小学校の関係者の努力により交流事業が実現し、その後も継続されているということです。こういった実例を参考にして、小学生の頃から障害者とかかわる(精神障害に限らず)機会をもつことが、正しい理解と啓発に繋がると考えています。何せ、私でさえ息子(当時小6生)に、大阪の事件当時には、「お父さん、職場でコワクない?」と言われた程ですから。社会に理解を求める活動は、まだまだこれからです。

スワンベーカリー赤坂店ところで、この近く(溜池)に「スワンベーカリー」というカフェがあります。会社組織をとっていますが、従業員は障害者が大多数を占めます。雰囲気が良く、味や値段が手頃なせいもあった、いつもOLサンたちで賑わっているようです。オフィス街の真ん中で、障害者が顔を見せて働いていることは、感動です。

ハートピアきつがわまた、全家連でも栃木県喜連川に保養施設を建設し(ハートピアきつれがわ)、併設の授産施設利用者が業務種目として、保養施設の仕事を担っています。経営的にはなかなか苦しいのですが、国内外からも非常に注目されています。

こういった、一般社会(市民)と障害者が普通に交流できる場面を、より多く作っていきたいものです。後に、「旅」についてですが、まず精神障害者は余暇をどのように過ごしているのでしょうか。症状の軽い人は、ごく普通の生活です。旅行もしています。症状が安定していない人たちは、毎日の生活が精一杯で余暇や旅行は次のステップです。社会復帰施設のプログラムを利用することで、最低限のサポートや障害年金などを享受しつつ暮らしています。もちろん積極的な方たちはスポンサーを見つけて、国際交流などにも出掛けています。そんな状況で、施設が企画する旅行などには割と多くの障害者が参加しています。障害者はみな周りに大変気を使っていますので、気疲れのない安心できる旅を求めているのでしょう。 ですから、今日精神障害者のことを多少認識いただいた皆さんにお願いします。是非とも、障害者本人と接する機会をもってみて下さい。そして、さまざまな生の声を聞いてください。その中で、自分たちが得意としている分野で、何ができるかを考えてみて下さい。そして、何か企画を立てる時には、保健婦・ソーシャルワーカーなどの専門職に相談をして、最低限のルールを加味した上で実施してください。精神障害者が旅行をする際には、薬の服用問題や現地での医療サポート体制など、いくつかのポイントがあります。こういったことを、念頭におきつつ、誰もが楽しめる優しい「旅」を考えていただきたいと念願しています。

質疑応答(抜粋)

Q:精神保健福祉手帳は交通費割引の適応が何故ないのですか?

A:写真が貼ってないので本人確認が出来ないという話もありますが、JR等は赤字を理由に対象拡大を否定し、行政による補助金制度の必要性を理由としています。

Q:手帳を取るということは障害は恒久的な物なのか。あるいは一時的な物なのか。

A:医者が判断している。個人差、障害の程度の差もあり、定期的に手帳対象・等級の更新があります。

Q:精神障害者は旅行が好きなのでしょうか、効用が有るのでは?

A:あまり学会等で旅行の効用を肯定した発表はありません。スポーツなどの競技がストレスになると言われているのと同様です。しかし、各種療法が研究されるなかで、リラクゼーションの範疇で旅もひとつの素材となってくると思います。

Q:アメリカの入国(入国カード)について?精神病の有無を申告する項目がありますが、入国に際して大きな影響があるのでしょうか?

A:真面目に書いてしまいトラブルが生じたケースは聞いたことがありますが、最終的に入国できなかった事例は耳にしていません。チェックすると何か、フォローが有るのではと思う人も居ます。ここは単に、認識の違い(精神病は危険☓)と考え、無視して良いのではないでしょうか。

この他に、意見交換として、海外に行く時には英文の処方箋(薬の)を持っていくと入国時にトラブルが避けられる。また、海外の病院でも薬を貰うことが可能になる、という話が有りました。会場では、田所さんが沢山分かりやすい資料を用意され、多岐に渡り説明が有りました。田所さんありがとうございました。

もっと優しい旅への勉強会 会報担当 木村(文珠川朋子)

ページの先頭に戻る