「もっと優しい旅への勉強会」定例会報告

2002年4月 定例会の報告
「船の旅に出掛けてみませんか」

「船の旅とバリアフリー」4月の勉強会は「船の旅」がテーマになりました。 講師の方々は森本靖之氏(郵船クルーズ 専務取締役 運航本部長)、杉山徹氏(トラベルフリーの会代表、元JTB クルーズ開発担当部長)、広瀬民男氏(日本せきずい基金理事、元日本航空パイロット)という豪華版。 とりたてて船旅に興味が無かった(失礼)私(会報担当者)も皆さんのお話にぐいぐい引き込まれ心は大海原のクルーズへといざなわれました。例会は4月26日午後7時より参加者は25名でした。

森本靖之さんのお話

前までキャプテン(船長)をやっていました。ところで皆さん「クルーズ」とはどのようなものでしょうか。「海」という漢字には「母」の文字が入っています。またお母さんのお腹の中の「羊水」と「海水」のHP(ペーハー)は同じだといわれています。私達の命が海で誕生した証でありましょう。客船「飛鳥」は毎年100日間の世界一周のクルーズを実施します。出航する時には乗客の皆さんは一様に緊張しています。船内には外科医一人、内科医一人、看護婦二人が乗り込みます。ところがクルーズから戻ってくると皆さんたくましくなっているのです。ドクターいわく、「健康診断で悪い数値があってもそれが良くなっている」そうです海には自然治癒力があるのではないでしょうか。

飛鳥号の写真クルーズに出でると「きれいな地球」が見られます。無数の星が空からぶらさがり、素晴らしい海の色、美しい朝日にはおもわず手を合わせてしまいます。こんなこともありました。少々亭主関白なご夫妻で船旅の途中に奥様が骨折されてしまいました。ドクターはここから飛行機での帰国をすすめ、しかしご主人が奥様にずっと付き添うならばこの先船旅を続けても良いことを告げると、ご主人は今まで奥様への労をねぎらい(反省?)船旅を続けることを決意しました。何かをきっかけに優しくなれる不思議な力があるのでしょう。

最近の旅は「安く行く」ということに関しては皆さんテクニックを習得してきたような気がします。しかし大切ななにかを忘れているような気もします。クルーズ船が地方の港に入ると、大歓迎を受けます。地元新聞に「xx観光船入港」と見出しが出たりします。「ん!観光船?」と思ったりもしますが、港ではその土地の特産物を売る店が出たり本当に大歓迎です。地元にお金も落ちるし、その出会いとふれあいは大変感動的で非日常的です。

カリブ海の写真世界のクルーズ人口は約1000万人といわれています。多くは北米で700万人です。日本は約20万人。なぜ日本ではクルーズ人口が延びないのでしょうか。日本にはクルーズに適する、アメリカで言えばカリブ海のような海が近くにないこと、日本の近海は季節によって荒れていることが多い、気候がクルーズには不向きなことなどがあげられます。また本来農耕民族であった日本人は「海に乗り出す」という好奇心が少ないのかもしれません。しかし最近では親の世代(本来日本人は金持ちです)は子供にお金を残すことよりも、自分たちで楽しむ方向に出費する傾向もあるのでクルーズを楽しむ人は増えるのではないかと考えています。某評論家の先生も「我々の年齢でこんなに楽しめる場所があるとは知らなかった云々」と発言されています。

現在、日本では4社で5隻の外航クルーズ船があります。内訳は商船三井客船所属「ふじ丸・23340t」「にっぽん丸・21903t」、郵船クルーズ所属「飛鳥・28856t」、日本クルーズ客船所属「おりえんとびーなす・21884t」「ぱしふぃっくびいなす・26518t」です。バリアフリーに付いてですが、もともと台風などに備えて手すりは完備されています。お客様も高齢の方が多く、全盲の方や車椅子を利用されている方も乗船されます。

写真による説明(車椅子用客室。大浴場に取り付けられた手すり。トイレなど。)

しかし船には安全法上どうしても取り払えない制約もあります。内側と外側を隔てるドアなどは厳しい基準があり、完全に段差を無くすことは今のところ技術的に難しい状況です。

杉山 徹さんのお話

私は20年ほど前に体を壊し寝たきりの生活になりました。現在も歩行が不自由です。ジャンボの登場と航空運賃の値下げで、定期航路として活躍していた外洋の客船は航空機に負けて、不定期航路のレジャー船(行きたい所へ航海)にシフトしました。クルーズの登場です。私はたまたま1991年に「ふじ丸」に乗船の機会があり、「これは行ける!」と感じました。疲れたら自分の部屋で寝転んでいても、船が身体を目的地に運んでくれます。もともと台風に備えて手すりは完備されていて、これなら車椅子でも足腰が弱って旅行をあきらめていたお年寄りでも、旅行が再開できます。

日本船は1990年初頭に建造されたこともあり、また、バリアフリーの考えが今ほど浸透していなかったこともあり、確かに「飛鳥」「にっぽん丸」「ぱしふぃっくびいなす」の客船は2室づつ車いす対応の客室がありますが、「にっぽん丸」以外は料金がやや高いデラックスタイプになっていること、ホールやシアターなどに段差があったりして、自力で行けないこともあります。

最近、2000年代にできた外国船、特にセリブリティクルーズ社の91,000tの船(「ミレニアム」「インフィニティ」「サミット」など)には車椅子用の客室が56室もあります。高齢者をマーケットとしてもとらえているのです。日本では大きな船を見ることも少なく体験搭乗などの機会もほとんどありません。一度でも体験すると満足度は高く(顧客満足度が95%以上)リピーターになっていきます。

大型船ですから揺れも少なく、金額も三食と2回のティータイムと数々のショーを考えると、1日単位では決して高いとは思いません。心配な船酔いも、乗船してすぐ「酔い止めの薬」(フロントデスクに山のようにあります。(無料です)を飲んでおけば大体大丈夫ですし、診療室にはドクター看護婦もいます。服装が面倒でという人もいます。レジャーですから、少し派手なぐらいで良いし、男の場合は紺のメタルボタンのブレザーが一つあれば、すべてOKです。

船の旅の面白さは、船でなければ行けない所にあります。例えば「小笠原」大きな船は接岸できないので地元の漁師の船が上陸を手伝ってくれます。島を離れる時も総動員で見送りに来てくれて感動します。それに海が透明で、珊瑚でできた真っ白な砂浜の美しいこと、いるかの大群が透明な水から踊り出てくるなど、船ならではの旅の感動です。 また太平洋と大西洋を繋ぐパナマ運河の通行も、船ならではの体験です。水門の開閉で船が山の上の湖に登りそれから山を下りて反対側に出るという1日掛かりの壮大なドラマで非常に興味深いです。パナマ運河を利用しようとする船はこの運河の大きさに合わせた船体になっています。

パナマ運河を通航できる船のサイズを「パナマックス」といいます。最近は最初からパナマ運河通行を前提にしないカリブ海クルーズ専用の大きな船もでてきています。

広瀬民男さんのお話

私は1996年に「飛鳥」のオセアニアクルーズに2週間参加しました。前に夫婦で参加した、船旅がとても印象的だったからです。(広瀬さんは現在車椅子利用者です)

飛鳥には車椅子用の部屋が2部屋ありますが、出来ればもう少し部屋の選択肢があればと思います。その部屋はシャワーブースだけなので風呂には入れませんでした。船内はエレベーターが数機あり、概ねバリアフリーでしたので移動には大きな問題はありませんでしたが、船内のシアターには3、4段の階段があり、また「星を見る会」というのに参加した時には普段は使わない所に登ったので階段でした。
また乗船下船時は残念ながら人海戦術でした。やはり人の手を煩わせることには気兼ねしてしまいます。都市での観光は先々に友人がいたので彼らの乗用車での観光で特に不自由は無かったのですが,友人の居ない停泊地でのオプショナルツアーではバスが使われ船長のご好意でつけてくださった船員の方も、バスの乗降には苦労されていました。長い船旅も毎日違った企画があり、飽きることはありませんでした。

身体の障害で躊躇われている方には思い切って乗られることをお勧めします楽しい船旅が出来ると思います。

質疑応答

Q:乗り降りの時のリフトはどのような物ですか?
A:低いデッキからスロープを出します。しかし船は潮の満ち引きで陸との間の高さが絶えず変化をしますので…。アラスカなどでは最大8mにもなります。
Q:緊急時の脱出方法はどうするのですか?
A:規則で24時間以内に避難訓練を行います。障害をお持ちの客様は事前に申告して頂いて場合によってはマンツーマンで対応します。
Q:バリアフリー化には費用がかかるがどうされていますか?
A:設計段階から考えていればそれほど費用はかかりません。「交通バリアフリー法」は不定期船は適応されていませんが、(ADA法も)だからといって考慮していない訳ではありません。一番の悩みは「バリアがあること」・外に面するドアはx㎝上げなければならない、ファイヤーウオール(防火区画)には隙間があってはならない。など安全性に対して厳しい法律のもとに船は設計されているのです。これからは安全性とバリアフリーの調和をどうして行くかだと思います。

※参加者からの感想
私は船旅がきっかけで旅好きになりました。「にっぽん丸」でした。ハンデキャップルームは広いし、食事がとても美味しい。ショーもみてとても楽しいです。料金も決して高くないです。


船旅の魅力をあます所なく紹介して頂きました。森本さん 杉山さん 広瀬さんありがとうございました。

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