「もっと優しい旅への勉強会」定例会報告

2001年8月 定例会の報告
「日本でも、ハンドドライブのレンタカーを普及させよう」

「ユニドライブ」で、自動車のユニバーサルデザイン化を実現!
講師:あい・あーる・けあ(株)代表 落合克良氏、専務 大館勝利氏

8月の勉強会は、24日(金)19時から日本旅行業協会の第1会議室にて、あい・あーる・けあ株式会社の落合代表と大館専務をお迎えし、「ユニドライブ」という着脱式手動運転装置についてご説明いただきました。あい・あーる・けあ(株)は、「身障者や高齢者の自立と社会参加をサポートする」という経営方針をもとに、様々な福祉機器を開発してきた会社です。創立は96年。さてさて、「ユニドライブ」とは、どのように使われているのでしょう。

落合さん、大舘さんのお話

落合:今日は、このような機会を与えていただいてありがとうございます。私は、幼少の頃患った脊椎カリエスがもとで、車いすを利用して生活をしていますが、下肢障害だけで上肢には問題がないので、ハンドドライブを使って車の運転をしています。
下肢障害を持つ人の免許が許されるようになって、恐らく40年ほどの歴史があると思います。私自身も30年ほど前に免許を取りました。しかし、そうした長い歴史にも関わらず、下肢障害の人が使っている、手でアクセルやブレーキを操作する装置、ハンドドライブは、ほとんど開発されず、変化せずに今日まできました。
当時は、車の免許がとれ、運転が許されるだけでも驚嘆し、それだけでも感謝するという時代でしたし、装置があるだけで不満などないというのが、障害者の立場だったのですが、しかし、本当は不満というか、要望は山ほどあったのです。私たちの調査では、そうした要望が明らかになりました。
まず、ハンドドライブは、これまで車に合わせて作り、車を変えると一緒に捨てられてきました。私は、父親の仕事の関係で技術にある程度の知識があったものですから、こうした装置は、確かに個々の車によって違いはあるけれども、ある程度の汎用性を持たせることが可能なのではないかと思ったのです。つまり、使いまわしができるのではないか。実際に私は自分の車を買い換える時に前に使用していたハンドドライブを付け替えて利用することを何度か試し、これはできると実感しました。

汎用性を持つことになると、どんな利点があるでしょうか。

まず第1に、障害者の移動をより広範囲に、そして快適にします。私も実感するのですが、若いときはどこでも自分の車で運転していけたものです。しかし、年がいってくると(笑)遠方に自分の車で運転していくのは結構つらい。やっぱり電車や飛行機を使いたいですよね。そうなるとしかし、現地についてからの足がないんです。これはまた不便ですよね。じゃあレンタカーを借りようと思うと、ハンドドライブのついたレンタカーは、ほとんどないわけです。取り扱っている会社もないけれど、あったとしてもそこに一台あるくらいですから、借りられる可能性も非常に少ないわけです。そういうときにこのハンドドライブがあると、これは、取り外しが可能ですから、鉄板(ベースプレート)だけを何台かの車に取り付けておいてもらえば、あとは自分のハンドドライブを持っていけば良いわけです。レンタカー会社も稼働率が良くない障害者用の車を特別に用意する必要がないので、コストが削減できますし、障害者も車の選択肢がひろがります。

ちなみに、レンタカー会社に「なぜハンドドライブの車を入れないのか」と聞くと、通常は「需要がないから」と答えます。この答えには私は納得いきません。一台しかない、頼んでも乗れない、それじゃあ乗る人が減るのは当たり前でしょう。需要はないのではなく、押えられているんです。

それから、ハンドドライブの車を持っているとしても、レンタカー会社に知識がないですね。障害によっては、普段ハンドドライブを利用していても、物によって使えない場合があります。そういった場合、一体その機種のどのようなものがあるのかを説明して欲しい。電話で的確な説明をしてほしいですが、これまでそういう説明をしてくれたところはないですね。

さて、他にどんな利点があるでしょう。例えば、自分の車が故障してしまったとき、他の家族の車に一台だけでも鉄板(ベースプレート)をつけておけば、万が一の時に自分のハンドドライブだけを移し変えて使うことができます。車に乗る障害者にとっては、車はまさに「足」ですから、すぐに車が使えるかどうかというのは、非常に重要ですよね。

また、これは、趣味にもなりますが、障害者でもいろんな車に乗りたい人もいます。しかし、車を買いかえる度に新しいハンドドライブをつけていたのでは、非常にコストがかさみますよね。そこで、この汎用性のあるハンドドライブなら、一つ持てばいろいろな車にほぼ取り付けなおすことができますし、しかも鉄板(ベースプレート)だけを取り付ければ良いので、そうコストもかさみません。つまり障害者にとっていろんな車を選び、楽しむ権利がひろがるということになります。

それから、府中で免許の試験を受けたときの話ですが、そこには車いす用の試験車が一台しかなかったのです。それでその一台で全ての障害者に対応しようとしているので、あらゆる装備がその一台についているわけですね。だから誰でも使えるようになっているわけですが、それがかえって、誰も使えないものにしてしまっています。たった一台で障害者の多様性に対応しようというのが、無理なのです。それならば一般の試験車に鉄板(ベースプレート)を取りつけておいて、ハンドドライブを利用する人はそこで装着したら、対応できるわけです。

あるいは、教習所もそうです。車いすの人が利用できる教習所は現在国立リハビリテーションセンターなど、ごく限られた施設しかありません。地方の方は、住民票をそこに移し、しばらく移り住んでから免許を取得し、また住民票を自宅に移して帰っていきます。もし、近くの教習所にハンドドライブ車があれば、そうした手間をかけることはないですよね。

そうした話を教習所にすると、「うちはエレベータや車いす対応トイレなど設備がありませんから、障害のある方がこられても対応しきれませんから、そういう車をおきません」などというところがあります。私に言わせればそれは本末転倒!学科を受けられないとか、トイレに行けないとか、確かに大切なことですが、全てを一遍に整えるのは難しいでしょう。そういうことは徐々にでいいのです。教習所なら、まず車の練習が可能になることが大事ではないでしょうか。トイレは自宅で済ませるとか、その他、いろいろな工夫ができる。まず、車を置いて、障害者でも練習ができる状況にすることが必要です。そういうことを考えないで、車を置くことさえ避けているのは、たんに置きたくないだけではないかと思えてしまいます。

以上のように考えると、汎用性のあるハンドドライブを普及させることは、コストの削減、障害を持つ利用者の選択権を保障するものとなるし、障害者本人にとってだけでなく、レンタカー会社や教習所などにとっても利益となります。

大館:レンタカーの利用について、事例を挙げると、先日、千葉の男性が「彼女ができたから、彼女と沖縄に行きたい」とご依頼がありました。彼の希望は、「彼女と二人きりで、自分たちだけで旅行がしたい」というもの。私たちはつてをたどり、沖縄の障害を持つ方の車に私たちのハンドドライブの鉄板(ベースプレート)を取り付けさせていただき、その車を貸していただけるようにお願いしました。それで彼等は飛行機で沖縄まで行き、むこうではその車をレンタルして無事、帰ってきました。彼等曰く、沖縄はホテルなどインフラ設備は整っているので、あとは移動の設備があればいいということでした。沖縄は常夏の島で雪もないわけですから、車いすの方で行きたい方も結構多いのではないでしょうか。もっとハンドドライブ車がレンタルされれば、旅行者の需要も増えるのではないかと思います。自分で車を運転していれば、トイレなども自由に行けますから。また、中で用を足すこともできますし。

落合:今話しにあったように、障害者の旅行は「トイレに始まってトイレに終る」と言っても過言ではありません。私など、飛行機のトイレなど、利用できないですね。だから、つい飛行機には乗らないようにしてしまう。正確に言うと、トイレは入れるけど、用を足して、そのあと衣服を着ることができない。だから、出れなくなってしまうのです。もうすこし着替えるスペースがあれば、と思います。いろいろなハード面の不備は介助者でということもありますが、それは旅を可能にしても、それでは楽しくないですね。自分のできることは出きる限り自分でやりたい。私の妻は右足に障害があり、6年ほど前に脳梗塞を起こして左にも障害が出ました。どこかにつれていってあげたいと思っても、トイレが心配で彼女はなかなか外に出たがらなかったですね。でも、つれていってあげたい。で、旅行先でいつも警察のトイレを借りました。洋式なんです。障害者は旅に出る時に、あらゆる事を計画して、そしてその中に不可能なことがあるとそれを避けながら旅行します。トイレはほんとに重要なポイントです。

それから、最近開発しようとしているものは、手動車いすの電動化機械です。私は車で移動しますが、駐車場から目的地までが遠かったり、坂があったりすることがあります。若いときは、そんなに気にならなかったのですが、それでも荷物があったりすると大変ですし、とくにここのところ、年齢的にも(記録者:そうですかあ?)坂道を登ったりすると疲れてしまって、それで、この手動の軽くて持ち運びが便利な点と電動の機動力が組み合わさるといいと思ったわけです。車を降りるときは手動車いすなら自分で持ち出せますし、そして車のトランクから、電動のモーター部分を取り出してとりつけられれば、簡単なわけです。人に手を借りず、なるべく思い立った時に思ったように行動できるというのが、重要です。自由ということです。今度の福祉機器展(10月24日~26日 東京ビックサイト 小間番号 4-015)で展示する予定です。

司会:日本で福祉車両などというと、通常介助者がいることが前提となっています。レンタカーでもそういったものが置いてあったりします。しかし、アメリカなどではほとんどそういうものはありません。ADA(障害を持つアメリカ人法)で、ハンディキャップカーとされているのは、ハンドドライブ車のこと。日本とアメリカの「自立」の違いを感じますね。あい・あーる・けあ社の考えは「介助者をつけないでも」という考え方。日本でもそういった考えを取り入れていくことの必要性を感じます。

大館:この間の沖縄旅行を機に、沖縄脊損連が協力してくれたり、北海道でもオホウツクレンタカーで採用してくれるなど、芽が出てきています。教習所でも置いてくれるところが出てきて、利用者から喜びのメールをいただいたりしています。まだ5年ですが、やってて良かったとつくづく感じています。ビジネス的に成功することはもちろんですが、もっとも大事なのは、お役に立つものを作り、広めるということです。今後もぜひ広めていきたいと思っています。

質疑応答

Q:装置の値段は?

A:装置が20万円、鉄板(ベースプレート)が三万から五万円です。とりつけ工事はそれぞれの業者で値段を決めてもらってます。鉄板(ベースプレート)のとりつけは4つ穴をあけて留める、ただそれだけの単純なものですが、電気系統をつないだり、鉄板(ベースプレート)を車種に合わせて最も強度の強いところにとりつけたりするところにお金がかかってしまうことがあり、値段の幅が出てきます。

Q:運転にはどの程度でなれますか?

A.:例を挙げると、骨折した人で全治3ヶ月の人が車を改造して乗っていました。私たちが他人の車に乗ってなれる程度です。私の知り合いは、健常でつい足を使ってしまうかもしれないので、あぐらを掻いて乗る人もいます。ある人は、高齢になって片足の関節が痛くて、長時間の運転が大変というので、このハンドドライブを装着しました。川口の工場で装着したそのときから千葉の自宅までのって帰ったということです。縦列駐車などは難しいので多少訓練がいりますが、それ以外はそうでもないようです。こうした事例から、障害者だけでなく、高齢者やちょっと足の弱い方にもご利用いただけると思います。

Q:あい・あーる・けあという名前の由来は?

A:形から入りました。IとRから会社のマークを作っていて、それで「けあ」をつけた。最初に作って、今は、「愛のあるケア」と言ってます。

Q:通産省の助成金を受けているようですが、いくら?

A:1700万です。

というところで、一端、落合さんが乗ってきた車を拝見しに駐車場へ。みんなでハンドドライブ装置の感覚を楽しみました。ちなみに私はペーパードライバーですが、足を使うより手で運転するほうが運転しやすいのではと感じました。普段細かい作業に足を使っていない分、足で操作することはかえって大変です。手のほうが微妙な動きが制御できそう・・・

その後会場に戻り、自己紹介と感想を述べて会を終了しました。そしてその後、全員二次会へ・・・

落合さん、大舘さん、長いお時間ご講演いただき、ありがとうございました。そしてお忙しい中、丁寧に校正をしていただき、本当に感謝しております。皆さん、本物を見たい人は、ぜひ福祉機器展に行って見ましょう。あい・あーる・けあ社は、車の展示場(小間番号 4-015)にブースを設けていらっしゃるとこのと。私もいってみたいと思います。新しい商品が楽しみです。またあい・あーる・けあでは点字名刺の機械も作っています。もちろん、印刷もOK.ぜひお問い合わせください。

その他、あい・あーる・けあ社のサービスに興味をお持ちの方は直接ご連絡ください。

あい・あーる・けあ株式会社 東京都葛飾区水元2‐21‐2
TEL:03‐5660‐7701 FAX:03‐5660‐7703
ホームページ:http://www.ircare.co.jp/

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