「もっと優しい旅への勉強会」定例会報告

2000年11月 定例会の報告
「今、私たち平和のために歌う第九コンサート」

講師:NPOゆきわりそう事務局長 小野鎭氏

日時:11月29日(水) 19:00~

会場:JTB本社8F B会議室

11月の勉強会はもっと優しい旅への勉強会元代表であり、現会計、NPOゆきわりそう事務局長の小野鎭氏からニューヨーク国連本部およびカーネギーホールで障害者を含むメンバーによるベートーベン第九交響曲の公演を成し遂げた活動ぶりについてお話をいただきました。
なお、JTBさんの移転により、この会場で行なわれる勉強会はこれで最後、ご協力いただいたJTBさんと草薙代表に感謝します。

小野鎭氏のお話

12年前、脳性まひや知的障害などの障害をもつ人を核とした合唱団「私たちは心で歌う目で歌う合唱団」が1989年設立されました。合唱を通じて明るく生きよう、文化の面でも”ふつうの人たち”と同じようにこれをエンジョイしようと言う趣旨で「第九」にも挑戦してきました。’90年4月には東京上野の文化会館で発表、さらには海外へということでオーストラリアやドイツ、ニュージーランドなどにも行ってきました。現地の人と一緒に合唱してこよう、また、現地の障害者に少しでも協力しようと寄付などもしてまいりました。
資金は参加者自身の負担のほかに団員や全国各地からの缶募金や、東京都を始め多数の団体や企業の後援や助成を得ました。
21世紀を前にして、戦争に終わりを告げられるようにしたい、人為的に作り出される障害者を少しでも減らしたい、平和のために歌おう、という気持ちを21世紀へのメッセージとして送るため演奏をすべく国連本部のあるニューヨークへ行こうということになりました。最初から歴史と伝統を誇るカーネギーホールへと考えたわけではありません。プロジェクト2000が組織され、事務局長として推されこれに取組んで来ました。東京都の後援を先に取り付け、ニューヨーク市の後援もいただき勇気づけられました。我々の趣旨と重度の障害を持つ人たちが積極的に合唱参加を通じて平和への祈りを捧げようとするこの願いが「音楽の殿堂」カーネギーホールへの道を拓いたのです。
3年におよぶ準備と練習をへて2000年5月31日カーネギーホールで「今、私たち平和のために歌う第九コンサート」が実現、その前日は国連本部に於て手話のパフォーマンスを交えた公演をすることもできました。
ベートーベン作曲の第九は大変な難曲、重度の障害を持つ人の参加を可能にしたのは音域が限られている人たちにも参加できるよう四部の合唱パートの他に導入された「第五パート」、これを編曲した新田光信氏は2年前に亡くなられましたが、その遺志をニューヨークに持っていきました。練習の指導者は公演で独唱テノールを担当した鹿内芳仁氏で国立音大大学院卒、日本オペラ振興会オペラ歌手育成部特待生。
演奏はニューヨークシンフォニックアンサンブル、指導・音楽監督は高原守氏、合唱には「私たちは心で歌う目で歌う合唱団」の他に京都、国連職員などから多数の共演がありました。総勢400名にも上り、舞台には100名程度しか上がれないため、後の300名はボックスシートで歌ったので一階平土間の客席には正面からと上のほうから音楽が聞こえ 2,400 名の入場者の感動をさらに高めたようです。
知的障害者も和太鼓演奏や合唱に参加しました。残念だったのは、手話のパフォーマンスが、音楽性を優先するカーネギーホールでの演奏では指揮者のサイドから受け入れられず、国連本部のほうだけになったことです。
入場のチケットは無料です。米国では無料ということは勇気のいることです。価値あるものには代償を要求するのが当然という国民性なので、何か意図があるのか、よほど価値の低いものなのかといった誤解を受けやすいことになります。
日本からの渡航者220名、内障害を持つ参加者は62名。旅行そのものも大変で色々な工夫が必要でした。私の旅行会社は閉鎖してしまいましたので、自ら企画していながら、他社に手配してもらうことになりました。片道13時間のフライトになり、障害者が堪えられるか心配でした。航空機は2社に分乗することになり、和太鼓のような気圧の変動で支障があるものは特殊なコンテナーを要するなど綿密な打ち合わせが繰り返されました。宿舎のヒルトンホテルには100室のアクセシブルルームがあり、その50室を使いました。和太鼓の練習にはスィートルームをあてました。そして合唱の全体練習は大宴会場で行われました。
ニューヨーク市や国連の後援を得られたことはこの大きなプロジェクトを成功させるための力になりました。しかし、実際に進めていく上では膨大なファックスやe-メールあるいは電話のやりとりが必要です。米国ではたとえレターだけのやりとりであっても趣旨がきちんと伝われば協力してもらえます。お役所的な手続きや儀式的なことが省けて助かりましたが、「わかってもらえるだろう」という甘えはいっさい通用しません。沈黙は金ではなく、雄弁こそ金なのです。
公演では 2,200 万円ほどの資金が必要でした。何とか自前でまかない、障害者のために国連の障害者基金に寄付も行いました。缶募金はこれからも続けて行きます。皆様のご協力を得て僅かずつでも国連に送り続けて行きたいと考えています。
今回の旅行の全ては3本のビデオに納められています。内第九の演奏関係は一本になっています。7,000円でおわけしています。
公演の後、希望者にはグランドキャニオンへ立ち寄る大西部への旅を準備しました。現地では多くの案内パンフレットの他、フリーのアクセシブルガイドが公的に完備しています。車いすでも十分に楽しめるよう設備や情報が整備されています。国立公園には一度入場してしまえば自由に乗降できる無料バスが走っています。2泊3日の滞在でしたが様々な方法でいくらでも楽しめます。日帰りではもったいないと思います。

質疑応答

Q:色々の障害のパターンがあって介助面では大変だったとおもうが?

A:重い障害者には家族などの同行を条件に、健常者の参加には介助協力を条件に参加してもらった。介助する家族の骨休めの機会を意識的に取った。医師の参加があったことは気持ちの上で助かった。大きな問題が起きずにやれた。ヒルトンホテルで部屋がバラバラに配置され、連絡が取りにくくて困った。

Q:参加者の費用面は?

A:ニューヨーク公演のみの参加は5泊7日で30万円。内音楽関係の費用35,000円を引くと実質265,000円でできた。後は色々工夫でまかなった。

Q:盲導犬は米国での扱いは?

A:ハワイは駄目だが本国では全く問題ない。

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