「もっと優しい旅への勉強会」定例会報告

1995年7月 定例会の報告
「障害者の旅行と介助者」

講師:全国自立センター協議会 常任委員 斉藤 明子氏

日時:1995年7月21日19時15分~21時15分

会場:JTB本社3階プレゼンテーションルーム

参加者:27名

私が、この勉強会でお話をするのは、2回目です。最初の時は、ADAについてお話をさせていただきました。(注:第1期 第4回 1991年7月11日)
私も旅行が好きで、いままでに50回ぐらい海外旅行をしていますが、そのうち半分以上は、障害者の方と一緒でした。最近はほとんど障害者の方と一緒の旅行ばかりです。
今日は、「なんでも話してください」ということなので、非常にうれしいと思っています。

旅行に関係する職業としては、旅行会社、交通機関、宿泊施設(それに観光施設)があります。まず、この3つに共通することとして、障害者が来たとたんに「面倒なやつがきた、困ったぞ」という反応があります。その反応を慇懃なまでの丁重な態度で隠そうとします。本心は障害者が来ることを怖がっているのだと思います。次に1回か2回、障害者を扱うと、こんどは障害者全部を理解したつもりになってしまいます。障害者が100人いれば100通りの障害や対応方法があると思います。手動式車いす、電動式車いす、同じ様に見えてもそれぞれに違うはずです。車いすを持ち上げる、車いすから移動する、車いすを分解する、どれをとっても人によってやり方が違うはずです。
また車いすの構造やつくりも異なっています。なのに言語障害がある障害者ならともかく、無い人に対しても、本人に聞かないで同行者に聞いたり、アドバイスしてもわかっているふりをして勝手にやって失敗したりしています。全体的に直接本人に聞こうという姿勢がありません。

同行者の扱いについてですが、事務所のスタッフがつい先日、JR労組が主催した障害者の北海道旅行に参加しましたが、200人の参加者のうち、友達同士で参加したのは、その人たちだけで、あとは、親子など家族との参加だったそうです。
まだ障害者が家族としか参加しないというのは情けない気がします。しかし、だんだん障害者も家族以外の人との旅行か増えています。また、どちらの方が障害者かもわかりません。先生や上司、或いはお客様を接待する側が障害者かもしれません。そんな時、同行している障害のない人を“世話する側”とキメつけた応対をされると困ったことになります。
私はよく養護学校の先生や施設の職員のように思われます。私はそんな立場で旅行したことはなく、自立した障害者が自分の責任で旅行しているのに、友人としてついていっているだけなのです。それなのに旅行会社や交通機関の職員は私に障害者の介助や監督責任を負わせようとします。
障害者に対しても私に対しても大変失礼な話です。障害者の権利運動が発展すればするほど、一緒にいる人は、親、家族ばかりではなく、さまざまな人間関係の可能性がでてきます。
次に、私の嫌いな呼び方に、「お付き添い」というのがあります。付き添いではないと言ってもあくまでも「お付き添い」と呼ぶ人も多く、まるで客が主張していることを聞かないようにと教育されているかのようです。
障害者と同行者の関係性を確認してただしく呼ぶようにしてほしいと思います。また、障害者と旅行して帰ってくると、多くの人から「ごくろうさま」、「つかれたでしょう」といわれます。「障害者と旅行すると大変」という勝手な思い込みから、こういうことを言われると、イヤな気持ちがします。
実際、障害があることからくる大変さ、身体障害の場合予想される物理的バリアーからくる大変さよりも、障害者に対して周囲の人々が見せる保護的な態度や優越的な態度に腹を立てるために疲れてしまう、ということの方が多いような気がします。障害をもった方は、一般顧客に対する態度を経験したことがないので、腹も立たないのかもしれませんが、私は差別を内在している偽善性に非常に腹が立ってしまうのです。
一方、受入れ側は、障害者がくることで、身構えたり、張り切ったりします。対応した感想を聞くと「大変だった」という意見が返ってきますが、その理由をつきつめて行くと、はっきりしない。具体的な困難を何もあげられないのにとにかく「障害者が来て大変だった」ということになっています。これは、必要のない対応、配慮をして疲れてしまうのだと思います。
普通の人と違う対応や配慮が必要な場合もありますが、普通の人でも遅刻をしたり、お酒を飲むと絡んだり、大声で喋ったりする様な手のかかる参加者はいくらでもいます。こんな人たちは、レッテルを張っていないので最初は判りませんが、もし「困る人」というレッテルを張っていれば警戒するはずです。障害者は障害者と言うレッテルを最初から張っているので、緊張してしまうのだと思います。障害者でも、手のかからない人と手のかかる人がいます。障害のない人とそれほど違うわけではありません。
でも、「障害者=手がかかる」という根拠の薄いレッテルを一律に張って大騒ぎしているのではないでしょうか。障害がない人を、「手がかからない」、「手がかかる」と区別しないのに、障害者はすべて「手のかかる」方に入れてしまうというのは差別ではないでしょうか。障害者が来ても、特別に意識しない、大騒ぎしないことが必要です。アメリカを団体旅行したときに、電動、手動その他たくさんの障害者が沢山参加した団体でしたが、航空会社のカウンターでは、他の人と変わりない挨拶をして、自然にチェックインをしてくれました。また、事前の打ち合わせは、スムーズに運ぶためには必要と思いますが、打ち合わせや事前連絡を強制するのは問題です。障害のない人には要求していないことを障害者だけに課すのは差別です。

旅行会社について

障害をもった人が、一般のパックツアーに参加を希望した時に、これを断ることができるでしょうか。原則としてできないと思います。これは、参加する権利を奪い、サービス提供の拒否にあたるので差別になります。 旅行の内容を説明して、参加するかどうかの判断は本人にまかせるのがいいでしょう。「発展途上国に行くツアーで、道路がでこぼこだ」とか、「コース中に階段が多い」とか、プロとして、ツアーの内容を説明することが求められます。障害があるからどうのこうのではなく、ツアーを客観的に説明し本人に判断してもらうことが一番適切です。
なぜなら、障害者は毎日の生活の中でクリアーできる障害かどうかを繰り返し試しています。また、旅行会社側が提供できるサービスの内容をきちんと説明することも重要です。
ツアーに参加する上で必要な手助けをすべて旅行会社側が保障する必要はありません。資本主義経済では利益をあげることが必要で、採算割れしてはビジネスを続けることはできません。したがって、できないことはできないと言うことが必要です。
「電動車いすを持ち上げるのには、介助者が6人必要ですが、わたし共では手配できないので、階段を担いであげることはできません」とストレートに言っていいと思います。自立生活をしている人は、自分は日常的にどのくらいの介助が必要か理解していますが、施設に入っている人や家族と生活している人は、自分で指示する前に、自然と介助されてしまうオートマチック介助に慣れているので、認識が甘い面があります。
自分が旅行中どの程度の介助が必要か想定できないので、こういう人は旅行会社との間でトラブルを起こしやすいものです。自立生活をしている人は介助の必要性を自覚しているので、必要な内容をはっきり言うことができます。
旅行会社が介助まで提供する必要はありません。自立生活センターでは、介助は有料というのが基本になっています。トイレ、着替えなど生存に絶対的に必要な介助を善意に頼ると、結局とばっちりを障害者がかぶることになります。
身辺介助は有料で実施する、東京では介助料が支払われています。また、介助者の選択権は介助をされる人がもっているべきです。旅行会社が手配してもうまくいきません。ボランティアで行うと、「やってあげている」、「いいことをしてあげている」という意識がありますし、海外旅行は普通の人でもしょっちゅう行けるものではありませんので、自分でお金をだせば、障害者が行きたいところより自分が楽しみたい景色や観光地もでてきます。
しかし、身辺介助が必要な人は、2倍の参加費と介助費を支払わなければならないというのは大変なことです。やはり、公的補助や財団などを作って、障害者本人に支給される制度を作る必要があります。自分の気にいった人を自分で雇って出かけられることが必要です。

交通機関について

DPI(障害者インターナショナル)では、毎年交通機関の改善を求めるデモンストレーションをしていますが、まだまだ進んでいません。階段の上げ下ろしには、4人から5人の介助が必要ですし、また、エレベーターがあっても、「前もって連絡しろ」という例も多いです。自由に乗込むことができるような作りになっていても「前もって連絡しろ」と言われます。これは、差別だと思います。
また、「乗客に頼んでほしくない、駅員が対応します」、「ちょっとお待ちください」で30分は待たせるというのもあります。決まった電車にのるために障害のない人よりも何時間も早く駅に行かなければならない。これは差別になると思います。障害者専用の設備は問題です。
みんなが使いやすいこと、高齢者や乳母車なども使えることをPRする必要があります。環境が悪いのではなく障害をもっている自分が悪いと思っている状況を変えて行く必要があります。

宿泊施設について

宿泊施設では、障害者用の部屋以外は使えないとの思い込みがあります。最近JILでは仙台で電動車いすの人が80人くらい集まる会をやりましたが、地元の障害者から使える宿泊施設がないと言われました。これは障害者用に作られた部屋でなければダメだと思い込んでいるためです。
普通の部屋でも車いすがドアさえ通れて、部屋の中に入れれば何とか使えます。
また、相部屋だと介助が必要だが、裸で転げ回ることもできる一人部屋なら介助はいらないと言う人もいます。杓子定規に部屋の設備が整っていなければならないわけではありません。
アメリカ資本のホテルには障害者に使いやすくなっている室が必ずあります。それも、障害の程度に応じていくつかのパターンが用意されています。海外でホテルの施設関係の情報がない時は、米国資本のホテルを探すとよいでしょう。

障害者の旅行について

障害があるからといって構えない。リラックスして受け入れる。○○しなければならないではなく、施設の不備を障害者、旅行会社双方の工夫で乗り越えるというような柔軟な姿勢が大切です。ある障害をもった人が「旅行に行けば普通の人でも不便はある。障害者だって何もかも揃っていなくてもいいですよ。ボクなんかシャワーが使えないからごみ箱を使って髪を洗っちゃった」と言っていました。障害者の旅行だから施設見学や交流会を入れなくては、ということはありません。遊びだけというツアーもあっていいのです。また、障害者の団体には禁煙席といった思い込みもよくあります。
基本はお客様に聞くこと、お客様から学ぶことだと思います。旅行に関しては、皆さんが詳しいかもしれませんが、障害に関しては障害者の方が詳しいのです。また、ひとつのケースだけを見て障害者全体を決めつけないでほしいと思います。

質疑応答

Q:ウィーンでとまったホテルは?

A:マリオットホテルだと思います。ルームキーに工夫がしてあって、ドアが開けやすくなっていました。障害者室の中ばかり整備して、ドアは以外に盲点になっているケースが多いのですが、ものすごく重いドアというのもよくあります。

Q:介助会社を設立して、高齢者の介助をしています。観劇や買い物のお手伝いをしていますが、将来的には旅行へも同行したいと思っています。障害者の人と旅行に行くようになったきっかけは?

A:語学ができ、言語障害の人とのつきあいもあったので、海外旅行に障害者が行く時に、障害者団体から指名を受けた。通訳兼介助者のような立場で、グループ旅行の費用を負担してもらった。最初のうちはちょっと自己負担もあった。自分で企画したこともある。

Q:一般のツアーに障害者の人が参加すると観光バスが問題になると思うが?

A:観光バスのトランクスペースには、一般的には電動車いすが入る。あとは、おんぶして車内に入ればなんとかなる。同じバス会社でも人によって対応が違うので問題点はあるが、電動車いすに乗る=重度という思い込みがあるが、アメリカでは便利な道具の一つとして見ている。日本では車いすに乗ることを恥かしく思っている面があるが、アメリカでは車いすの人に対しても歩けますかと聞く。つまり歩ける人も使っているということです。障害者向けの旅行もよいが、バラエティが無い。だいたいハワイか西海岸になってしまう。障害が悪いのではなく、設備を整えなかった社会が悪い。

Q:駅で乗降客に頼んではいけない理由は?

A:介助は鉄道会社の責任と強調している。ツアーでも旅行会社から他の参加者に手伝ってもらってはこまると言われた。気持ちよく申し出てくれているのに、断っているとかえって人間関係が悪くなりそうで嫌だった。

Q:旅の成功は介助次第か?障害者に参加費を2倍払ってくれと言いにくい。生活介助と観光介助の線引はどのようにすればいいか?

A:以前の経験では、介助の必要度をわけた。荷物を持ってもらうだけでいい人の場合10%位割り増を払ってもらってポーター等で対応した。お風呂介助が必要な人は3人で1人分を負担してもらった。全介助の人で自分で見つけられない人の場合は、こちらで介助者を見つけたが、前もって国内旅行に行ってもらって、気が合うのか、金銭負担をどうするのか当事者間で決めてもらった。簡単な介助は添乗員がおこなってもかまわないと思う。

Q:障害者が参加すると周りに迷惑がかかるか?

A:添乗員が障害者につきっきりになるようでは他の顧客から文句が出ると思う。しかし、実際に困ったことがないのに、障害者が同じツアーに居たと言うだけで文句を言ってくるような人に対しては、やんわりと差別であることを知らせるか、無視していいのではないか。

Q:障害者ツアーで、ついボランティアをしてしまい、断れない性格で無理してしまうが?

A:「ええかっこしー」の人は、無理をしても評判を守るか、多少評判が傷ついても無理をしないかの選択肢があります。障害者には、障害がない人はスーパーマンだという幻想があるので、かなり大変なことも頼んできます。できないことはできないと言ってもいいのです。頼む障害者の方も、周りの人に満遍なく頼むようにすることが必要です。つい気持ちよく手伝ってくれる人だけに頼んでしまいがちですね。障害者も介助者も両方がつきあい方を身につける必要があります。

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