「もっと優しい旅への勉強会」定例会報告

1995年5月 定例会の報告

日時:1995年5月23日19時20分~21時20分

会場:JTB本社3階プレゼンテーションルーム

参加者:33名

PartⅠ:「関西と首都圏のアクセス体験」

アクセス東京代表&点検士 今福義明氏

関西のアクセス事情の紹介をしたいと思います。

私の視点は、電動車いすを使って、公共交通を利用して行くことが出来る観光地を目安にしています。電動車いすを使っていると普通とは違う視点から観光を考えます。普通の観光では、観光ガイドブックを読んで、実際に行き見たり食べたりします。障害者も団体旅行では同じですが、個人旅行では、安く、日帰り又は半日で行くことが出来る、気軽に行ける観光が目安です。

私が住んでいたのは京都ですので、お話も京都、大阪、神戸、奈良が中心となります。公共交通を利用して、個人または友達と行ける範囲です。電車またはリフト付路線バスを利用しますが、今回はハンディキャブについては触れません。関西ではまだ少ないことと料金が高いからです。

京都市内

電車が7路線走っていますが、この路線の市内部分の110駅のうち50%の駅が階段を使用しないで、ホームに行くことが出来ます。この数値は大変高い率で、神戸市内が少し上で、大阪市内がややこの数字を下回ります。電動車いすは階段の昇り降りに男性が4人から6人がかりで持ち上げなければなりませんが、このことは男性はともかくとして、女性や老人の利用者はたいへん気が引けます。知り合いの女性で、家のすぐ近くに駅がある人がいますが、エレベーターが無く、介助がたいへんになるので、利用しません。また、ホームに行けても、ホームと車両の段差がネックになるので、電車もなかなか利用しません。京都市では毎年3台づつリフト付路線バスを増やしています。ハンディキャブを運行する団体もあります。また、神社仏閣も比較的利用しやすいと思います。だいたい利用可能度は50%ぐらいでしょうか。

大阪府

「福祉のまちづくり条例」ができて、毎年10基分のエレベーターの設置に助金がでるようになりました。また、リフト付路線バスの導入率も全国でトップです。導入にあたっては、既にある路線に走らせるだけでなく、リフト付路線バス用の循環路線を新設しました。東京でエレベーターがある地下鉄は、都営12号線の各駅と新宿駅の5基だけです。大阪では、エレベーターの設置だけでなく、「ええまちマップ」という車いす利用者向けのマップを各駅で配布しています。

神戸市

「福祉のまちづくり条例」があり、地下鉄全駅にエレベーターと車いすトイレがあります。阪急やJRも要所要所の駅にエレベーターがあります。また、六甲ライナーの全駅、ポートライナーの半数の駅にもエレベーターがあります。ちなみに埼玉の新交通システムは全駅階段ですし、千葉のモノレールは始発駅だけしかエスカレーターがありません。しかも、途中までです。

奈良

近鉄の自社努力がすごいと思います。近鉄は関西に全部で360駅ありますが、どこでも安心して乗降できます。ちなみにスロープなどの設置率では、近鉄がトップです。阪急や近鉄は、階段とエレベーターの組合わせを標準にしていますが、関東の私鉄は、階段とエスカレーターの組合わせが標準です。JRは、階段や段差が多く、無人駅も増えています。

滋賀

アクセス改善が遅いようです。JRに乗って行くのが困難です。湖西線は全駅高架で階段のみになっています。私鉄は近江鉄道が走っていますが、日本で一番運賃が高いわりにはアクセスはよくありません。関東でも北総開発鉄道が運賃が高いのですが、エレベーターは少しだけあります。

電動車いすで行ける観光地

京都を起点として、電動車いすで行ける観光地をご紹介したいとおもいます。

一番目は、新神戸駅から布引ハーブ園へ行くルートです。京都から鉄道を利用して、階段なしで行くことが出来ます。布引ハーブ園へは、北野から新神戸ロープウェイを利用しますが、駅にはエレベーターがあります。新神戸駅と北野駅の間には、急な坂がありますが、ハンディキャブの送迎も行われています。ここのロープウェイのゴンドラには、車いす対応型が3台あります。アクセスをあれこれ考えないで利用できるところです。東京にも観光地は沢山ありますが、移動の壁が高くて、素直に観光を楽しめません。

二番目は、六甲アイランドからハーバーランドのルートです。JR住吉駅は、エスカレーターですが、後の交通機関はエレベーターが備えられています。六甲アイランドにあるAOIAという遊園地も車いすに対応しています。六甲アイランドからハーバーランドに行くシーバスも車いすでアクセスOKです。JR神戸駅には、エレベーターがあります。

三番目は、大阪の鶴見緑地です。ここは、「花と緑の博覧会」会場跡地ですが、地下鉄鶴見緑地駅には、エレベーターがあって、段差はありません。「花と緑の博覧会」が開かれた際には、出展したパビリオンに車いすで入れるのは当たり前でしたし、会場内を走る全ての乗り物に乗れました。

四番目は、嵐山から京都太秦映画村へのルートです。ここも電動車いすで行くことが出来ます。二条城や御所も車いすで見学できます。

その他としては、京都・宇治の平等院。琵琶湖・浜大津、ここの駅にはエスカレーターがあります。大阪・大阪港の海遊館、地下鉄中央線の大阪港駅に最近エレベーターが付きました。

東京ディズニーランドについて

東京ディズニーランドは、アクセスは良いと思います。私は行った時に、「パスポート」を買って入場しました。ところが『ウエスタンリバー鉄道』には乗れない、『蒸気船マークトウェイン号』は次の便に回されるという目にあいました。だいたいアトラクションの1/2が利用できない。でも「パスポート」を売っている、これはおかしいと思います。
鉄道でいうなら、駅のアクセス度が20%なら料金も20%に割り引くべきではないかと思います。ワンマン化、無人化、高架化、地下化が進んで、車いすでは使えない駅が多いなら割引にすべきだと思います。
JR舞浜駅には、エスカレーターがあるのですが、利用した際、介助されて階段を昇り降りするよりエスカレーターを使いたいと言ったら断られました。市当局から危ないのでエスカレーターは使用しないようにという指導があるという理由でした。でもエスカレーターがある駅なら、階段よりエスカレーターを使用すべきだと思います。
京都に住んでいた時に近くの駅のエスカレーターを年間約1300回ぐらい利用しましたが事故はありませんでした。自分に取っては安全ですし、階段よりましだと思います。東京駅を利用すると否応なしに車いす専用の暗い通路を通らされます。車いすを利用する人もいろいろなルートを選択できるようにすべきだと思います。

質疑応答

Q:利用されている電動車いすは、どんな工夫がありますか?

A:背もたれにリクライニング機構があります。また、立ちやすいように座面が上がります。介助用のバーが6ヵ所ついています。その他に、内蔵型充電器、時計、ライト、フラッシュライトがついています。

Q:関西では、どのくらいの人が出歩いているでしょうか?

A:実態はわかりません。もしかすると東京の方が多いかもしれません。建物が標準化しているし、ハンディキャブの運行が発達しているからです。

コメント:
今福さんは、長い間京都を拠点に関西地区の交通機関のアクセス状況の点検を続けてこられました。昨年、東京に生活の拠点を移されたのを機会に勉強会にお呼びしました。豊富な経験をもとにしたお話しが聞けたと思います。関西方面に旅行に行かれる際には相談してみたらいかがでしょうか。

(文責:草薙)

PartⅡ:「知的障害をもつ人と旅行」

フレンド45を支える会代表 氏田 照子氏

「フレンド45」は、県立養護学校を卒業した同期生で作った「青年学級」です。当初の目標は、「20歳のお祝い」を自分たちの手で開くことでした。会場についての本人たちの希望は中華街、居酒屋、ホテルなど多様でしたが、話し合いの結果「ホテルでフランス料理を」という要求で統一され、去る2月4日、プリーズベイホテルで盛大にかつ無事に「成人を祝う会」が終了しています。

今回のスキー旅行は、このパーティーの1週間後に計画されていました。出発日の前々日に突然キャンセルされたこのスキー旅行は、スキーをしたいという彼らの希望に答えて、昨年の12月に企画、旅行会社にも十分な事前説明をして旅行の手配を依頼してきました。
当初はホテルと新幹線を準備すべく旅行会社が手配をしてくれていましたが、2月の連休で新幹線の手配が難しいとのことで、旅行会社からパック旅行を薦められ主催旅行への参加になっています。
旅行会社側からの断りの理由は「宿舎が障害者は他のお客さんの迷惑になる」との主旨でした。旅行会社側がかわりに出してきたプランもおよそ一般の方の理屈では十分に納得の得られないものでした。
今回の旅行の申込みにあたり旅行会社に「知的な障害をもつ人たちのグループであること、介護者がつくこと、宿泊の経験もあり特に他のお客さんとのトラブルはないこと」を伝えてありました。結局私たちは、予定の期日を延期して自分たちでプランを立て直しました。
そして、今度は自分たちで直接切符や宿泊施設を手配して「やりなおし旅行」をしました。スキー旅行を楽しみにしていた青年たちの希望は『突然のお断り』から1ヵ月後にやっと現実のものとなりました。

私たちが今回のことを通して問題だと思うことは「障害者がグループで気軽に旅行をするサービスが得られなかった」ということです。もっと言えば旅行会社を通して手軽に旅行ができるための、旅行会社側の障害をもつ人たちへの具体的な認識の不足が考えられるのではないかということです。「知的な障害がある人たちにはどのような配慮があれば旅行を楽しむことができるのか」という意識が旅行会社側にどれくらいあったでしょうか?私たちは一旅行会社や宿を批判しているのではありません。ただ「障害者がグループで気軽に旅行できるように」という願いのもと、各旅行会社の方々のご協力、ご努力を期待するものです。

世間には知的障害に対する誤解や偏見がまだまだ多くありとても残念に思います。今回のことも宿舎側から「障害者だと知らされていなかったので受入れ準備ができなかった。」との発言がありますが、旅行会社の営業担当者が宿舎も含めてコーディネーターとしての役割を果たしていただけたらと切に思います。是非知的障害者を理解するための研修を充実していただくこと等で、知的障害者もごく普通に旅行を楽しめるためのサービスを提供してほしいと思います。

新聞報道をご覧になった各地の宿泊施設から新聞社を通して受入れのお誘いをいただきました。とてもうれしく思いました。

また私たちは、この事実を「障害者が社会の中であたりまえに暮す」ことの問題提起として活動を起こし、厚生省や運輸省に改善の要望書を提出しています。要望書提出後、運輸省の旅行振興課からお電話をいただいて意見交換をしてきました。
担当者は、知的障害者の旅行形態は、親子か養護学校などの団体旅行しか想定しておらず、知的な障害者がグループで旅行する(大学のサークルのように)ということのイメージは全く持っていらっしゃいませんでした。

障害者をとりまく環境は国際障害者年を一つの契機として大きく変化してきています。自治体や鉄道会社などが進めている「福祉のまちづくり」や「福祉の都市環境整備」で私たちの街の風景も変ってきました。駅舎の障害者優先エレベーターや点字ブロックなどが整備されてきたり、道路の段差や視覚障害者のための音声誘導横断歩道などは、だんだんと当たり前のものとなってきているようです。このようなハード面の整備とともに忘れてはならないのがソフト面だと思います。私たちは道路の段差だけではなく「心の段差」を取り払う努力がもっともっと必要だと感じています。

亀井運輸大臣が3月10日の参議院の運輸委員会会議で『旅行業というのは、私は大変難しい仕事だと思います。ただ単に計画を立てて募集をして、そしてスケジュールに乗っけてという、それで済むものではございませんで、旅行者は、添乗員の方の具体的な、特に老齢の方、障害者の方等についてのやはりきめ細かいサービスといいますか配慮といいますか、そういうものが伴わなければ旅行してよかったなんてことは思われないわけであります。旅行というのは行けばいいというものじゃなくて、来てよかったな、行ってよかったなという、その基本はやはり村山内閣の人に優しい政治という、まさに人に優しいノウハウを提供し具体的にそれを実行しなければ旅行業というのは本来成り立たない、そういう意味では極めて俗人的な色彩の非常に強い業種だ。私はこのように思っております。』と述べられています。

どの人も、もれることなく『もっと優しい旅』へのサービスが受けられますように願ってやみません。今回の問題提起がそこに接近するための具体的な一歩になれば幸いです。障害者も気軽に旅行できるサービスを当たり前に受けることを要求して行くことは、非常に重要なことですが、この問題は「フレンド45」が単独で追いかける問題ではないことは言うまでもありません。多くの方々とともに広くみんなの問題としてとらえていきたいと考えています。今後は旅行会社へのアンケート調査などを試みるとともに、実際にこれからも『青年たちの旅』を続ける中で具体的に考えていけたらと思っています。本日この会場にいらっしゃる勉強会の皆さんのお力もお借りできれば本当に心強いです。

「フレンド45」の次の目標は、北欧視察団構想です。障害をもつ本人自身が先進事情を視察してこようというものです。どういう風にしたら彼らのこの願いが展開でき実現できるのか?今後の「北欧視察団」の実現にむけて皆さんのお知恵をお借りできれば有難いです。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

編集注:氏田さんの講演録については、ご本人のご協力により、当日の講演録に編集、加筆の上掲載いたしました。

質疑応答

Q:一番怒りを覚えたのは、旅行会社ですか宿舎ですか?

A:今回頼んだのは、大手旅行会社の代理店でしたが、親会社では「知的障害のことを聞いていなかった。伝票にも書いてなかった」と返答してきました。なぜわざわざ書かなければいけないのでしょうか。彼らは宿舎のハード面での配慮を必要としていなかった訳ですし、事前説明も十分にしてありました。直前の一方的なキャンセルという今回のケースは、十分にペナルティを得られるものでしたが、ペナルティで解決してしまうのではなく、社会的な問題として提起してゆくことの方が、重要であると考えました。宿舎の方とは直接お話をしていません。しかし宿泊予定のペンションでは「気持ちが悪い」などの発言もあったと聞いています。担当者と連絡が取れなくなってしまうなど旅行会社側の誠意がこちらには全然伝わってきませんでした。

Q:手配の手順は?

A:12月に「2月に湯沢方面に新幹線でスキーにいきたい」とお願いしました。障害をもつ本人たちが快適な旅行が出来るように、またより充実したサービスを受けられるようにとの配慮から。知的障害者のグループであること、今までに特にトラブルもないことなどの事前説明も十分にしてあります。申込金12万円も旅行会社からの指示にしたがって払込をすませてありました。

Q:受入れの申し出があった宿泊施設を教えてほしい?

A:事務局にご連絡いたします。

編集注:連絡があった宿泊施設

  • 長野県原村 ペンション「コスモス」
  • 福島県猪苗代 リステル猪苗代(系列店にもどうぞのこと)

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