「もっと優しい旅への勉強会」定例会報告

1995年2月 定例会の報告

日時:1995年2月23日19時20分~21時30分

会場:JTB本社3階プレゼンテーションルーム

参加者:46名

PartⅠ:「電動車いすと旅」

江戸川区役所孝行係電話相談員 勝矢光信氏

電動車いすで旅行することの意義についてお話ししたいと思います。

私は、高等学校まで親に送り迎えをしてもらって通学をしていました。卒業後の18才から27才まで家から出られない時期があり、辛かったです。家で本を読みながら、なんとかして外へ出ようと考えていました。仙台で第1回の「車いす市民全国集会」が開かれ、それに参加したのを切っ掛けに、27才から車いすで乗れる駅をつくる運動を初めて、街へ出るようになりました。街へ出るようになった頃は、風が気持ちよく、草花が揺れるのを見て感動したものでした。

10年間運動を続けて、37才の時に地下鉄に乗れるようになり、それからは劇的に人生が変わりました。降りられる駅を一つずつ増やしていきました。11年が過ぎて、今ではどこへでも行ける自信があります。これからの10年は外へでて、できる仕事をやってみたいと思っています。

私は、現在自宅から一人暮らしのお年寄りに電話をする仕事ををしています。1日に100人ぐらいの方に電話をしています。家族は、妻と、中学生と高校生の女の子、目の見えない父がいます。16年前に最初の旅行、新婚旅行でしたが、北海道へ10日間出かけました。この時、妻と話をしたのは最初の3日だけで、後は介護のストレスでほとんど口をききませんでした。妻一人の運転で2700kmぐらい走りましたが、1人だけの介護や手押式の車いすの介助は、負担が大変でした。このことから、手押式の車いすでの外出は介護者に大変な負担をかけることがわかって好きではなくなりました。反面、電動車いすは、自分にとっても介護者にとっても負担軽減から良いと思います。

障害者にとっては、旅行は権利であり義務だとおもいます。肉体にハンディがあればあるほど、自分自身で社会的に影響力をおよぼせると思います。以前、一番ケ瀬先生(日本女子大学教授)のお話で、動物の中で旅行をするのは人間だけであり、それは好奇心から来るものだというお話をお聞きしたことがあります。身体に障害があっても心は障害者ではないと思っています。ずっと旅行をつづけていきたいと思っています。江戸時代の「八隅藍庵(やすみろあん)」の「旅行用心集」に、旅行をしない人は人情が無く、視野が狭いと書かれています。障害をもつことは気にならないが、人情が無く、視野が狭くなることは怖いと思います。旅行は人格形成であり、自分を豊かにし、また肉体のリハビリになります。「ホテル」、「ペンション」、「クアハウス」というそれぞれの単語に共通するものは、それぞれが「保養」という意味をもっているということです。旅行はもともと福祉に近いものでした。現代は、若者が行くところというイメージができて福祉から離れてしまいました。障害をもっていても、旅行は医療でありリハビリであり教育でありそれぞれに大きな意味をもっています。

私は、「福祉旅行」をめざしていますが、これには環境や経済力、介護システムを整える必要があります。環境については、驚くほど整備が進んでいます。経済力も年金等で支えられるようになりました。少年雑誌が発行当時から想像できないくらい今日売れるようになった様に、福祉旅行も大きくなると思っています。私は、進行性筋ジストロフィーの多くの仲間を看送ってきました。病状は明日は今日より悪くなります。地下鉄にエレベーターが付いて、明日良くなるのではなく、今良くしてほしいと思っています。多くの仲間を外へ連れ出したいという焦りがあります。さぼってはいけない、声をかけなければいけない、社会へ働きかけなければいけないと思います。進行性筋ジストロフィーは、腕や足の筋肉が衰えるように、心臓の筋肉が衰えてきます。心臓が弱くなってくると、外へでる事が怖くなってきます。振動が体に響きます。段差が無く、車で短距離で、短時間で楽な入浴ができるような条件が必要になってきます。旅行が好きな筋ジストロフィーの仲間は多くいます。病気が進行するとだんだん外へでられなくなってきますが、環境のバリアを薄くすることで、出られるようになります。家ばかりにいると、介護者との間のみに精神的に苛立ちが増えてきます。旅行が対話の促進になります。体験談や1枚の絵葉書などが、後々の生活に影響をあたえます。1年に1回でも旅行にでかけられればと思います。

心臓が弱まると手押式の車いすより電動車いすの方が楽だと思います。これは、電動車いすは座席がしっかりしており、リクライニングになるものがあるなど、疲れないからです。交通機関を選んでいけば、楽に旅行が出来ます。各地でリフト付きのタクシーが走っていますので、これらを利用すれば旅行が広がります。タクシーと新幹線の連携は、いい関係だと思います。千葉の石坂直行さん(障害者旅行の先駆者)に、普通のタクシーも使うように進められました。電動車いすは、分離すれば、トランクに積むことができるので、行動範囲が広がり、どこへでも行けるようになりました。エスカレーターにも乗れるようになりました。電動車いすは多少なら傾いても大丈夫です。エスカレーターは、可動方向を逆転できますので、また行動範囲が広がりました。飛行機と船はいままで問題がありませんでした。飛行機はドライバッテリーでなくても国内線は大丈夫です。路線バスにもリフトやスロープ付が走り始めています。

電動車いすの旅行が保証されつつあります。介助者の負担がすくないのがメリットです。手押式車いすだと、妻でも1日介助すると口をきかなくなります。お金を払った介護者でも問題がおきます。ロープなどを利用したり、用具を開発して、交通機関への乗り方に工夫をこらしています。宿泊施設でも、お風呂ぎりぎりまで近付いています。畳の部屋でも、そのまま入っても大丈夫です。この点は、宿泊施設の理解があればと思います。要は慣れだと思います。電動車いすに座っている方が良ければ、そのままでいいと思います。常識をやぶることが必要です。

いわゆる観光地は良くなってきています。昭和48年頃は、伊勢神宮では、「車輪」が入るのが禁止されていました。電車の利用も危ないからと禁止されていました。今では言われません。ものすごい変化だと思います。あちこち行けることは感動です。行きたいと思っていたところへ行けるようになってきています。去年の4月から国立博物館が障害者の入場は無料になりました。これもなかなか変えられないものでした。これからは、障害者と旅行すると得した気分になるかもしれません。介助者のふりでもいいかも。東京ディズニーランドでも優先的に取り扱ってくれます。

旅行に出る時は、いろいろな物を持って行きます。充電器、変圧器(海外旅行のとき)、修理道具、予備のタイヤチューブ、ロープかベルト(引っ張ったり支えたりできる)、カッパ(雨を怖くなくなる、また防寒に役立つ)、折り畳みスロープ(電動車いすの背中のカゴに入るくらいの大きさ)。機器の開発も重要です。私の電動車いすは、背もたれがたためてバスなどのトランクに積めるようにしています。

海外旅行では、カナダのトロントやグアムが良かったです。トロントでは観光バスにリフトが付いていました。これなら身障者割引が無くてもいいかなと思います。いろいろな乗り物を利用出来ることが生活を広げると思います。ナイアガラも楽に見れました。グアムではシュノーケリングを覚えました。海の中で魚を見た時にみんな平等に泳いでいると思いました。介助者は引いてもらう手がふやけるまで、魚を飽きずに見続けました。

これからも自分の世界を広げていきたいと思います。

質疑応答

Q:電動車いすの重量は何キロありますか?

A:本体が72キロで、私の体重を合わせて122キロあります。

Q:組み立ては簡単ですか?

A:タクシーの運転手が組み立てられるほど簡単です。でも若干の電気の知識がいります。

Q:シュノーケリングはどのように行ったのですか?

A:口にシュノーケルを咥えて、海に浮いているだけです。介助者に手を引いてもらって移動します。

会場からの補助:ウエットスーツを着れば軽くなって簡単に浮きます。ゴーグルとシュノーケルをつければ、障害がある人でも簡単に楽しめます。

PartⅡ:「盲導犬と行ったフランス旅行」

池ヶ谷勝美氏、盲導犬 チャコ

神奈川県平塚市から参りました。今回、おそどまさこさんがコーディネートした、「視覚障害者にやさしいパリ・ニースツアー7日間」に20名の方と参加しました。
私にとっては3回目の海外旅行になりますが、15年前に行ったポルトガルには、盲導犬は連れて行きませんでした。6年前には、ひまわり号を走らせる会の企画で、180名と一緒にシカゴへ行きました。この時は、盲導犬を同行したのですが、平塚から成田までタクシーに乗車を拒否されたり、集合場所であるホテルに入館する際にもめたりしました。

飛行機の利用時間が長い旅行では、盲導犬の排泄が一番心配ですが、前回ひまわり号の時は、空港ターミナルの外で乗る直前に排泄させたり、17時間に及ぶ列車での移動の時には、トイレタイムを決めて列車を止めてもらいました。全体としては、犬をつれていることを意識しない旅行が出来ました。

今回の旅行では、成田までのタクシーは問題なく行くことができましたが、やはり、飛行機での排泄が心配で、参加するかしないか迷いました。今回は、検疫をすませて、搭乗する1時間前に排泄をさせ、その後パリ経由でニースまでの14時間半の時間がかかりましたが、大丈夫で、犬自身もしたいそぶりもしませんでした。着いてから、空港の芝生で排泄をさせました。

国内ではいつでも盲導犬を連れていることを意識しますが、今回の旅行では、モナコのカジノとパリのムーランルージュだけが入ることができませんでした。ここは、やはり伝統的なものが理由かなと思いました。しかし、日本だと盲導犬を持たせている間のサポートが心配になりますが、ヨーロッパではその点は心配ありませんでした。また、ホテルやレストランでも意識しなくても大丈夫でした。また、ホテルの近くで盲導犬が排泄する場所をさがして、用を足し、後始末をしていたら、現地の人に「そのままでも大丈夫」と言われたほどでした。でも一応始末はしました。シェパードやセントバーナードなどの大型犬を列車のホームで見かけた位ですので、精神的に非常に楽でした。

検疫について簡単にご説明しますと、日本の犬が海外にでることは特に問題はありません。また、フランスは入国に関して比較的ゆるやかで、帰りの日本への帰国に関しては、日本の検疫に、フランスの裁判所の承認書類を提出すれば比較的簡単です。今回は、手続きを添乗員の松本さんにやっていただいたので、苦労はありませんでした。

帰ってきてた際に、空港ターミナルで係員に“犬”を連れていることを注意されたり、リムジンバスの中でも、他の乗客に嫌味をいわれたりしました。日本ではまだまだ理解がすすんでいない事を実感しました。

今回の旅行では、ツアーの中に18のチャレンジ項目が設定されていました。その中で、「国境を歩いて通る」という企画では、海沿いの道の国境に、遮断機があったことが印象に残っています。盲導犬に対する回りの人の態度も、お国柄があり、フランスでは、静かに見ていてくれる様であり、また、イタリアのサンリモの市場では、陽気に話し掛けられました。

ゴッホが最後に住んでいた町へ行きました。お墓が麦畑の中にあって静かないい雰囲気でした。その町までは、地下鉄と国鉄を乗り継いで行きましたが、車内放送やホームの放送が無い、券売機での切符の購入方法が難しい、看板で誘導している、まったく回りの人がいない、ホームと列車の間の間隔が広くステップも高さがある、車両のドアも自分で開ける等、障害者には大変だと思いました。日本では、放送があり、ホームと車両の隙間がが狭いので、その点はいいと思います。

日本の道路信号は高い位置にあるため、見にくいので、低い位置への設置を希望しているところですが、パリ市内には、接近した車用に低い位置に信号があり、これは不便だと思いました。

一緒に行った金さんと盲導犬スイート

初めて外国へ行きました。なにが良かったと聞かれますと、全部よかったとお答えいたします。視覚障害をもった人でも、ちょっとしたサポートで世界中に行けることを実感しました。もっと長い旅行期間でも良かったかなと思ってます。とにかく時間が足りなかったです。
一緒に行った健常者の人にも感謝したいと思います。特に盲導犬のスイートに感謝します。念の為おしっこシートをもって行きましたが結局使いませんでした。私は盲導犬を使い始めて2年ですが、行きが12時間30分、帰りが11時間の旅行で、犬の順応性に関心しました。また行きたくなりました。
気付いた点は、トイレの様子で、車いすには狭く、また便座が高いと思います。その外では、ロダン美術館が印象的でした。

一緒に行った前川さんと盲導犬インディ

私の盲導犬は、一緒に行った盲導犬の中では一番年上でしたので、排泄が我慢できるか心配でした。現地についてやれやれという気がしました。
ゴッホの家が一番印象的でした。むぎ畑がちょっとぬかるんでいましたが、広さを感じました。ニースでは、砂の無い海岸で、海に触れようとしてびしょぬれになりました。フランスの海は、潮の匂いがしませんでした。
盲導犬の排泄がいつでもできることは、楽なことでした。フランスの方は、さりげなく手助けしてくれて気持ちよかったです。
ノートルダム寺院では石作りの反響が素晴らしいというパイプオルガンが聞きたかったです。

企画したおそどまさこさん

今回、半年がかりで企画した旅行が20名(テレビ朝日ニュースステーションのスタッフ4名含む)の参加者で行われました。盲導犬は排泄の他に時差惚けも心配でしたが、良く寝ていたせいか、時差惚けはありませんでした。今回のツアーは、子供と旅行に行くと同じぐらい大変かと思いましたが、実際には、盲導犬は働き手として優秀で手間はかかりませんでした。目の不自由な方の旅は、四感で感じてしただくので、吟味していろいろな企画(18のチャレンジ)を考えましたが全部を何とかクリアーできました。
第2弾として、9月にドイツとオランダへの旅行を計画しています。

添乗員として同行した松本さん

検疫は、農林省事務所の方に説明会から参加していただき、事前チェックをして、当日の空港で手間を減らしました。
日本に戻ってきてからは、フランスの証明書で自宅で検疫ができます。
日本航空を利用しましたが、1度に4頭の盲導犬が同乗するのはめずらしいケースだと思います。席の位置を工夫してもらいましたが、結局足下で大人しくしていました。
盲導犬を公共交通機関に乗せる場合は、口論の問題がありますが、エールフランスでは、事前に口輪を着用するように言われていましたが結局しませんでした。日本航空では、他の乗客からクレームがあった場合に着用でした。これも結局着用しませんでした。モナコも公共交通機関では首輪着用ですが、利用しませんでした。全体として、口輪は、所持していったほうが良いと思います

質疑応答

Q:盲導犬の長時間の排泄のがまんはどのようにするのか?

A:前の日から食事や水を控える。盲導犬の食事は、一日に1回食と2回食のどちらかだが、食事でコントロールする。最長で25時間食べていない。パリについてから食事をした。(補足:念の為、大人用のオシメを機内に持ち込んだが結局使用しなかった。)

Q:盲導犬は旅行中、好奇心が大きくなるのでは。興奮しないか?

A:私の盲導犬は、吠えない犬にちょっかいだす癖があるが、ストップをかけて、座らせる。行きはウキウキ、ソワソワ。帰りはぐったりしていた。成田空港では、やっと帰ってきたと言う感じだった。興奮はしていたようだ。

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