「もっと優しい旅への勉強会」定例会報告

1995年1月 定例会の報告

日時:1995年1月26日19時15分~21時15分

会場:JTB本社3階プレゼンテーションルーム

参加者:37名

PartⅠ:「私と障害をもつ人の旅行」

近畿日本ツーリスト(株)大阪中央支店販売課長 森下 薫氏

障害をもった人とのお付き合いの経験をお話ししたいと思います。

私は入社して19年目になりますが、障害をもった人の旅行の企画に携わるようになったのは、15年前(国際障害者年の前年)に、ラジオ大阪(産経新聞社)から障害をもつ人の海外旅行の企画を依頼されたのがきっかけでした。実際に初めてかかわった旅行は、神戸で開催されたポートピア博覧会に行く施設の日帰りバス旅行でした。バスの中で障害をもった人との初めての世界に触れました。バスから降ろすことが、介助の初体験でしたが、どうやったらいいのかわからず、触れることが怖かったことを記憶しています。

1981年(国際障害者年)に最初のハワイ旅行を催行しましたが、最初は知的障害をもつ人のビザがおりなくてこまりました。領事館からの指定で医師の診断書とI.Q.テストが義務付けられていましたが、I.Q.の計測不能の方などもおり、アメリカ領事館になぜ必要なのかを聞きにもいきました。この時の返答は「アメリカの国として快適に過ごしてもらうために用意をするために必要」との返事でした。また、日本航空にも規定以上の30数人の車いすの方を搭乗させるために、社内会議で特例を認めてもらったりもしました。

現地では、たまたま一緒になったプロ野球の「名球会」の方にパーティーに参加していただいたり、現地の障害者との交流を行ったりの4泊6日でした。毎日汗びっしょりになって動き回りましたが、参加者の皆さんには喜んでもらうことができました。

こんなに喜んでもらえるならと、毎年、年に30回ぐらいの旅行(内海外は20回ぐらい)を企画しており、またできるだけ添乗員として参加するようにしています。主催者の方だけでなく参加者の皆さんと交流を深めたいと考えています。いままでに、海外旅行を約120回、国内旅行を約200回程度企画してきました。

旅行に行かれた経験の無い方からは、「本当に旅行にいけるのか?」という疑問がでてきますが、手話通訳や介助者の手配まで、できないことを補い、一般の人と同等に、できるだけ多くの人に旅行に行っていただきたいと考えてきました。いままで行った所で珍しいところでは、エジプト、アラスカ、アイスランドや豪華客船の旅などがあります。障害をもった人が皆さん一緒に旅行をと考えていますが、脊髄損傷や脳性マヒなどそれぞれ必要なことが違うので、なかなか一緒にはできませんが、できるだけリラックスして旅行していただけるように考えています。また、添乗員にも、何ができて何ができないか理解してもらうようにしています。

食物アレルギーの方の旅行をお世話したことがあります。私たちが普通に食べている、ごはん、小麦、卵などが食べることができない、間違って食べてしまうと、呼吸困難を起こすと言う大変な条件でした。アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドに行きましたが、現地の医者の協力を得て診断書を送り、下見をして病院の確認や食事場所でのメニューの打ち合わせをしました。昨年、モントレーに行った際に、デザートに小麦が入っていたことがありました。材料の中に入っていたので調理場では気付かなかったのです。病院から重曹を取り寄せて手当をしましたが、ひとつ間違えると大変なことになるところでした。万が一の場合に旅行会社として、どう責任を取って行くかということと、いかに安心して参加してもらうか、慎重に考えなければならないと思います。

旅行をたくさん企画していると、ボランティアの方にもたくさん関わっていただいています。ボランティアビューローがありますが、ボランティアを希望する人みんなが知っているわけではないので、新聞を通じて募集することがよくあります。だいたい参加者と同じぐらい集まります。ボランティアの方にも原則として同じ料金で参加していただいています。お話を聞くと、なかなかこのような機会を知ることが無いので参加したというお話もありました。

仕事をしていると、くじけそうになる事もあります。その様なときは、ある知人のことを思い出します。この方は、中国人で、また口が聞ける程度の重度障害者なのです。ハワイに一緒に旅行に行った際に、海岸でマットに乗せて、海に入ったのですが、最初は怖がっていたのが、だんだんうれしそうな声に変ったのです。最後はなかなか海から出たがらないまでになりました。いままで、ほとんど家から出た経験がなく、海はもちろん、プールに入った経験も無かったそうです。この様な人のために旅行をたくさん作ってあげようと思うのです。
昨年、盲学校の同窓会でアメリカ西海岸へ行きました。165名の方が参加しました。皆さん音楽が好きな方でした。旅行中は、窓から見える風景や食事の説明をできるだけしたつもりでした。しかし、旅行から帰ってきて感想として、「旅行はよかったけど、親切ではない」と言われました。日本食を食べた際に、わさびを食べてしまったそうです。視覚障害の方にとって、わさびを食べてしまうことは非常に哀しいことだそうです。もっと親切にその人の立場に立ってサービスを提供しなければならないと思いました。感動と後悔の連続です。

障害をもった人で、旅行をする人は少ないと思います。これは、活動範囲が小さい、情報量が少ない、所得が少ない、周囲の人が障害者だから旅行に行かせない、本人が旅行が実現できないものという意識(旅行会社で断られた経験が多い)が主な理由だと思います。旅行に本当に行けるという意識と、旅行という非日常的経験は重要だと思います。

ADA(障害をもつアメリカ人法)の基本的考え方の啓蒙活動と障害を深く知る必要があると思います。また、ボランティアとして参加してもらい、旅行を楽しみながら障害者との交流を深めていただければと思います。

仕事としてときどき旅行が嫌になることもありますが、障害者の方との旅行はすばらしい経験になっていると思います。

質疑応答

Q:阪神大震災後の関西方面の旅行業に対しての影響は?

A:約300億円の売上げダウンが見込まれます。神戸のお客さんのキャンセルが多くなっています。
(参考)日本交通公社
関西国際空港出発の2割がキャンセル。全国の取扱い客数の7パーセントにあたります(1月17日~20日の間)。2支店が営業不可能。系列のトラベランドの9店舗も影響を受けています。

Q:ツアーに参加するボランティアの割合は?

A:できるだけ現地(海外)のボランティアにお願いをしている。日本からは看護婦などの参加者。これは、ボランティアに関する費用負担を減らすためです。10名の方が車いすなら男女2名づつぐらい付くようにしています。

Q:ボランティアの責任問題は起きたことがありますか?

A:大学生のボランティアに対して怒ることもあります。参加者とコミュニケーションを取るように教えています。しかし、ボランティアはあくまでも補助的な仕事を担当しています。参加者から「面倒をみてくれない」との意見があることはあるが会社として責任問題になったことはありません。

Q:ボランティアの旅行代金はどうしていますか?

A:半額をいただくようにしています。ボランティア本人にとっても有意義なことと思うから。しかし、他のツアーなどで無料というケースがあったことから、満足しなくなり、一応ケースバイケースだが、最近は無料が多くなっています。

コメント:講師の森下さんより、当勉強会の感想として、「こんなに多くの友人を得たことはない。本当に楽しくそして勇気づけられました。また、関西では今回の震災にめげず頑張っています。」とのコメントがありました。

(草薙)

PartⅡ:「あおぞらツアーの実際と課題」

(株)アロハセブン営業部営業第三課 東別府友紀氏

(株)アロハセブンは、20年前にハワイの個人旅行中心の旅行会社として設立されました。現在、全国に8支店、ハワイに2法人、アメリカに3法人をもっています。しかし、取扱人数が増えていくうちに、個人旅行という当社の特色が薄れてしまうという弊害が出てきた為、それを解消すべく4年前にハワイ現地法人として、マイセブンを設立しました。

マイセブンは当初、ハネムーンとシルバーのお客様をターゲットに置いてサービスを提供していましたが、マーケットの拡大を考えていた時、大阪で障害者の方々のツアーを当社で受け入れることになり、そのツアーの実施の結果、マイセブンの提供しているサービスが障害をお持ちの方々のニーズにマッチしているという感触を得ることができ、「あおぞらツアー」の企画につながりました。

さらに様々な障害をもった方の意見を取り入れました。特徴として電動車いすで行ける。毎日出発で、最小催行人数2人から行ける。パーソナルノートにご記入いただき、現地会社マイセブンの専任スタッフが綿密なお世話をいたします。ただし、このスタッフは、介助者ではなく、旅行のお世話をするスタッフです。
また、それぞれの方に、それぞれのサービスを提供するために、視覚障害の方向けには、「声のパンフレット」、「点字板の旅行の最終案内」。聴覚障害の方向けには、「観光スポットの説明プリント」、車いすをご利用の方には、「車いすのまま乗れる自動車」、「ハンディキャップルーム」の準備をすすめています。
実際の催行例がまだ少ないので、社内研修で行った海外旅行を例にお話をいたします。

アメリカへは、関西国際空港からロサンゼルスへ行きました。空港のエアポートリムジンバスは、低床で乗りやすい作りでした。全体を通しては、ADA(障害をもつアメリカ人法)のお陰で、車いすが動きやすい設計になっており、また、聴覚障害の方にも表示が多く便利だと思います。しかし、視覚障害者には対応が余り良くなく、ホテルによってはルームナンバー等はつるつるで、数字が浮き上がってないない所や、点字標記が少ない所もありました。また、視覚障害の対応に関しての指導は少ないそうです。

チャイニーズシアターでは、有名人の手形足型がありますので、視覚障害者の方でも楽しめると思います。

サンタモニカでは、車いすでも波打ち際まで行けるように木道があります。
ユニバーサルスタジオでは、車いす専用バスが走っており、アトラクションなども優先的に乗せてもらいました。

サンフランシスコでは、バークレーへ行きました。日本では障害者の町として知られていますので、期待して行きましたが、段差をなくそうと努力がみえる町でしたが、段差は思ったより多かったです。UCバークレー(カリフォルニア大学バークレー校)では、手話や点字のサービスがあるそうです。

ホテルの設備としては、日本にはないTDDが客室に備え付けられており、TDD同士のダイレクト通信や電話局でのリレーサービス、またルームサービス等もホテルへ頼むことができます。公衆電話でもTDD対応のものがあります。

ハワイでは、マウイ島のホテル「ウエスティンマウイ」に浜辺用車いすが備え付けてあります。ちょっと曲りにくいのですが。これは、ワイキキにもあるらしいです。

ハワイのホテルには、バイブレーターコ-ル(振動式目覚まし)が備え付けてあり、これは電話、目ざましの他、緊急時にも使えるものです。でも音が大きくて、横に寝る人は大変だと思いました。また、客室のドアはゆっくり閉り、ホテルによっては留めることもできます。ハンディキャップルームのドアはレバーノブになっています。

皆さんにお願いがあります。皆さんもいろいろと海外へ旅行されると思います。その中で、どこが良いとか悪いとか情報をできるだけ交換していただけるようにお願いいたします。初めて海外旅行される人にはアメリカは行きやすい国だと思います。

日本航空でも「プライオリティゲスト予約センター」を設けていますが、当社でも旅行相談窓口「あおぞらデスク」を設けています。これは、当社がホールセーラー(旅行企画販売会社)で店舗がないための対応でもあります。当社がこの企画を実施するにあたり、旅行会社にアンケートをしたところ、障害者の旅行について100社中4割が取り組みたくないという回答がありました。でも逆に6割の会社は取り組んでみたいという回答でした。

この「あおぞらツアー」は、まだ知名度が低いのが難点ですが、アメリカ本土の法人では、自社の車を改造して車いすの方の受入れ体勢を整えていますので、是非ご利用いただけたらと思います。

質疑応答

A:現在のところ、肢体不自由の方だけです。高齢者の方には、自分は高齢であるけれど「障害者」ではないという意識があるようです。

Q:阪神大震災後の関西方面での旅行業に対しての影響は?

A:関西空港出発のキャンセルが多くなっています。

【コメント】

講師の東別府さんは、コンピューターエンジニアをしながら、ボランティアをしていましたが、昨年より旅行業に移って、障害をもつ人の旅行に取り組むことになりました。「あおぞらツアー」が大きく育つように頑張っています。

(草薙)

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