「もっと優しい旅への勉強会」定例会報告

1994年11月 定例会の報告

日時:1994年11月24日(水)19時20分~21時30分

会場:JTB本社3階プレゼンテーションルーム

参加者:36名

PartⅠ:「これまでの旅行相談活動から」

空とぶ車イストラベルサロン代表 成瀬 史恭氏

「空とぶ車イストラベルサロン」を始めて今年で9年目になります。また、東村山市社会福祉協議会での月2回の旅行相談も3年目を迎えました。最近の相談内容の傾向は、高齢の方の旅行や中途で障害をもった方の旅行に関するものが多くなってきています。

私の自宅の近所にある沼袋の障害者会館からの紹介で、リュウマチによる障害をもった方から、「箱根に旅行に行きたい」という相談がありました。この相談に対しては、箱根にある東京都心身障害者休養ホーム事業対象施設を紹介し、交通機関については小田原ロマンスカーを勧めて、ドアに近いところの座席を利用するように、車両編成表に印を書いて渡しました。また、介助ボランティアの手配については、中野区のボランティアセンターを紹介いたしました。また痴呆症の老人の会から、「小淵沢の温泉へいきたい」という相談があったこともあります。

このような相談内容にみられる共通の希望は、「温泉に行きたい」、「露天風呂に入りたい」というものです。しかし、露天風呂は入るのが難しいのが現状です。杖を使用している方には、足が4股になった杖を、浴場で滑らないように、滑り止めのマットなどをと、福祉機関の情報も提供しています。

ホテルでも、障害者トイレを備えている所は、まだまだ少ないのが現状です。しかし一方で、旅館で洋式トイレを備えている所も増えてきています。このような情報を的確に伝えることが重要だと思います。

60代のお年寄り夫婦が、車いすを借りにきたことがあります。九州に90才の親と一緒に旅行するということでしたが、ご主人はしっかりしているので、列車の接続時間に余裕をみるようにして相談に応じました。90才の親を60代の子供が介助するという現実を見て、高齢化社会の真っ只中になってきていりのだということを感じました。本人が元気でも、駅などの設備が整っていないと大変だと思います。

在宅障害者の方から、「介助者がいない」という相談も寄せられます。トラベルサロンは人材バンクではないので、各地のボランティアセンターや「障害者いきいき情報センター」、山口県社会福祉協議会で実施しているような援助団体を紹介しています。

電動車いすを利用する方も増えてきています。手動車いすならよいが、電動車いすは対応がわからないという理由で、受け入れていただけないことが多くみられます。そのような際は、事例を紹介して、電動車いすの方が、介助の負担が少ないことを説明しています。

現在、障害者の方が比較的楽に利用できる乗り物は、新幹線と飛行機があげられます。しかし、当初エレベーターは、東京駅や新大阪、小倉駅程度の駅にあるだけで、名古屋駅にもありませんでした。今では、新幹線の駅全部にエレベーターがあり、在来線の駅でも改善が進んでいます。地下鉄の車両にも車いすのスペースが設けられているようになりました。しかし、席があっても、エレベーターの改善は遅いと思います。駅によっては、階段昇降機やエスカレーターなどを設置していますが、電動車いすを考慮するとエレベーターが望ましいと思います。空港は、どんどん改善が進んでいて、今でもなんとか利用できます。リフト付の路線バスも増えてきています。このような、設備改善を利用して旅行に行ければと思います。

相談を始めた頃は、「自宅から東京駅や空港にどうやって行けばいいのか」という相談もありました。現在では、「観光地(目的地)についてから、宿等に行く移動手段をどうしたらよいか」という相談が多くなりましたが、各地のハンディキャブ等の情報が少ないと思います。以前には北海道に手動装置付レンタカーがありましたが、利用が少なくてやめてしまった事例もあります。このような便利なものはもっと利用をしてほしてと思います。

身体に障害をもった方だけでなく、精神障害や知的障害の方の旅行も増えてきています。しかし、国内の受け入れ体勢だけでなく、海外でも受け入れに対する理解が進んでいないところもあります。ビザの取得が難しい国もまだあります。所持している薬が、入国審査の段階で薬物規制にひっかかる時もあります。英文の処方箋を用意することをすすめています。これからの方の旅行に関しては、窓口を広げていく段階だと思います。
旅行に関する情報は、まだばらばらで、まとまったものが少ないと思います。相談窓口も日本航空でも今年開設したばかりです。旅行というのは総合的な産業ですから、各旅行会社や事業者が相談窓口を設けてほしいと思いますが、それを促進するには、旅行に行く当事者の働きかけも必要だと思います。特筆すべきところでは、航空関係の進歩で、障害者用トイレを備えた飛行機も導入されていますし、機内用車いすも増えています。

旅行に関しての器材面は、かなり進歩してきましたが、サービスなどの対応は、昔も今も対して代わっていないと思います。新幹線の障害者用個室などの予約は、地元の駅では買えずに、東京駅に買いに行くように言われます。最寄りの駅や旅行会社の窓口で普通の切符と同じ様に買えるようにしてほしいと思います。日本交通公社で出版している「宿泊情報」に車いすでとまれる部屋をもつ宿泊施設の情報を掲載するようになりましたが、時刻表の中にある列車編成表で、車いすスペースの記載があるのは、新幹線だけで在来線分には記載がありません。

宿泊施設の受け入れ体勢で見ると、公共の宿は進んでいます。ホテルも進んでいると思いますが、料金が高いのが課題だとおもいます。その他の宿泊施設では、ペンション等で障害者を受け入れるところが増えてきています。オーナーの方が福祉施設で働いていた経験をもっている方が多いようです。

観光施設では、最近のテーマパークは受け入れ体勢が進んでいますし、地方では公共の車いすトイレが増えてきています。しかし、例えば車いすトイレの前が砂利道だったりするような所もありますので、当事者をいれた施設作りが重要です。 車いす利用者向けの整備は、進んできていますが、音声や点字による視覚障害者向けのガイドが遅れています。

海外旅行は国内旅行より進んでいます。ハワイやアメリカ西海岸や北ヨーロッパなどへ行かれる方が多く、ニュージーランドでは、スポーツ体験も取り入れています。決められたパックツアーから、個人旅行を組まれるようになってきています。

社会全体としては、障害者の旅行はまだまだ少ないと思います。旅は心のリハビリだと思いますし、障害者を受け入れることによって、社会のリハビリになっていくと思います。

質疑応答

Q:介助者に対する費用負担や介助依頼の方向性はどうなっていくと思いますか?

A:障害者が介助者の費用負担をしている例は多いが、ケースバイケースだと思います。友達関係同様の介助者による自己負担や中途障害の人の介助者との尽き合い方、介助者費用の公的補助制度の充実の方向性を見極めたいと思います。

Q:団体での旅行費用は、障害の程度によって変わってくるのか?

A: 一人当たりの値段を算出して、個々の条件で話し合って決めてもらっています。

PartⅡ:「フランスでの障害をもった人の観光旅行事情」

フランス政府観光局エージェンシー担当 山本啓介氏

フランスは、国土が日本の1.5倍、人口が5800万人弱で、そこに年間6000万人の観光客を受け入れている観光国です。

フランスにおける障害者旅行についてお話ししたいと思います。フランスでは、社会資本が充実してきています。私のフランスでの滞在経験でも、障害者の方を目にする機会が多く、障害者の方の社会参加や復帰が促進されていると思います。また、地方自治体がガイドブックの編集や情報提供サービスを行い、各施設で障害者向けの専用駐車場や電話ボックス等の整備を行っています。

まず空港ですが、パリ空港公団が整備を行っています。パリには国際空港のシャルル・ドゴール空港と国内線のオルリー空港がありますが、ターミナルビルのフロアーごとの利用可能施設一覧表があります。航空会社に関しての調査は間に合いませんでしたので、今後調べてご報告したいと思います。

次に鉄道についてですが、フランスでは、鉄道網が発達し、障害者用の設備が完備されています。しかし、それぞれに利用制度がありますので、事前に障害の内容と必要介助を連絡するようになっています。フランスの新幹線TGV等の車内には、車いす用スペースと移動しやすいように肘掛が可動式になった座席があります。駅構内の案内は、ピクトグラムで表示され、車いす利用者用に乗降用ランプ、低いカウンターなどがあります。聴覚障害の方用には、時刻表や列車編成表も用意され、補聴器も準備されています。一般的にヨーロッパの駅では構内アナウンスが無いように思われていますが、大きな駅ではアナウンスも実施されています。フランスでは、傷痍軍人や労災で立っているのが困難な人には、証明書が発行され、優先席が設けられています。車掌に連絡して、介助を依頼することもできます。ドーバー海峡を横断するユーロスターを始めとする、フランスの新幹線TGVやRER(郊外地下鉄)も、今年からシャルル・ドゴール空港に乗り入れを始めて便利になります。ただ、一部未完成の施設があります。

高速道路も発達していますが、各サービスエリアの設備状況もピクトグラムで説明されています。

バスも低底などの手配が可能です。パリ市交通公団では、旅行の問い合わせやバスの予約を受け付けています。パリ市内の鉄道は市電のトラムとRER(郊外地下鉄)と地下鉄がありますが、RERは駅によって利用できるところとできないところがあります。聴覚障害者向けには、補聴器やピクトグラムが整備され、視覚障害者向けにはホームの点字ブロックや車内放送があります。盲導犬は無料になっています。フランスは犬には寛容な国で、町中で見かけますし、レストランなどでもよく見ます。

宿泊施設については、政府観光ホテルは設備によりランク付されています。車いす受け入れが可能なホテルはリストが発行されています。パリ市内では障害者受け入れ可能なホテルの数が少ないのですが、これは、建築に関する規制が難しいためで、改装が難しいからです。パリ郊外には新しいホテルが増えており、受け入れ可能な施設の普及率は高くなっています。ただリストの受け入れ可能のマークの表示基準が不明なので注意が必要だと思います。

レストランもリストが発行されています。しかし、受け入れ可能なところは多くありません。

観光施設については、各都市毎に施設リストがあります。ピクトグラムで表示されていますが、やはりマークの基準をチェックする必要があるます。車いすの貸出や介助者必要などのマークがあります。ルーブル美術館などでは、障害者見学の手引きを発行しています。国立の施設は火曜日が定休ですが、団体見学の場合は受け入れを行っています。電動車いすでの見学や手話通訳の手記により通常日でも可能です。
パリを例にお話ししましたが、フランス全体としても旅行はしやすいと思います。全体としての障壁は高くありません。言葉が壁となりやすいですが、これは例えば一般の旅行者でもおなじです。体に障害をもっていても、隠すことなく旅行されてほしいと思います。

特別な観光地としてルルドがあげられます。キリスト教の聖地として有名ですが、ここは、山の中の小さな町ですが、宿泊施設はパリにつぐ数があります。年間500万人ぐらいの方が訪れ、フランス各地から特別編制の列車が運行されています。重度の障害をもった方も奇跡を願って訪れています。

医療施設は、内部障害をもった方に重要ですが、人工透析ができる病院などのリストが発行されています。ただ、フランスは医療費が高いので医療保険などが使えるかどうか、注意が必要です。アメリカンホスピタルという病院が開設されて、ここは英語が通じて、保険が適用できるので旅行者からは人気があります。

政府観光局の窓口としては、障害者の方からの要望がわからない部分があります。しかし、フランス人はスキンシップを大事にする気質なので、こまっていれば、さっと手助けしてくれます。

質疑応答

Q:シャルル・ドゴール空港からパリの北駅にいく電車のアクセスはどうなっていますか?

A:11月にTGVとRER(郊外地下鉄)が乗り入れました。ただ、ターミナルが全部オープンしていないので、わからない点もあります。

Q:小さいバスのツアーも沢山ありますが、それへの障害をもった人の参加はできますか?

A:障害をもった人への対応という観点で調べていないので詳細はわかりません。ただ、日本語ガイドの観光ツアーが増えていますし、日本人専用ツアーもあります。車両にワゴン車などを利用したものもあります。

Q:盲導犬に対する一般の人の理解はどうなっていますか?

A:詳細はわかりませんが、マークがあれば盲導犬はOKだと思います。盲導犬に対する理解はあると思います。余談ですが、町中で点字ブロックを見た記憶はありません。

Q:ほとんどの地下鉄駅にアクセス可能というが、実際に利用した感じではそうは思わないが?

A:実際にエレベーターがあるかどうかは不明です。

Q:パリの地下鉄では駅名のアナウンスがないので、視覚障害者などはどうやって判断しているのか?

A:点字の路線図が標示されていると思います。

Q:フランス鉄道の割引制度は日本人にも適用されるのか?

A:国籍には関係なく割引が受けられます。ただ、割引は混んでいない時に利用できるようになっていますが、今年の5月に制度が変更されて、現在はよくわからない点があります。

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