「もっと優しい旅への勉強会」定例会報告

1994年10月 定例会の報告

日時:1994年10月20日19時19分~21時30分

会場:JTB本社3階プレゼンテーションルーム

参加者:43名

PartⅠ:「 私のパリ旅行」

後藤 昌子氏 三菱電機(株)情報システム製作所

今年の夏、8月3日から11日にかけて、パリに遊びに行ってきましたので、その時のお話をしたいとおもいます。

旅行先にパリを選んだ理由は、兄が現在留学しているためです。ですから初めての一人旅は、往復の飛行機の中だけでした。 一番の心配は、10時間以上飛行機の旅で、トイレの利用と、ずっと同じ姿勢でいるために、腰が痛くならないか、の2つでした。航空会社はパリへの直行便があることと、障害者へのサービスがよいとの評判で、JALを選びました。
チェックインの時に、座席の移動やトイレの利用をしやすくするために、トイレの近くで肘掛けが上がる通路側の座席をお願いしたのですが、連絡ミスのために、肘掛けが上がらない違う座席になってしまいました。このため、他のお客さんに事情を話して、席を替わってもらうことになってしまいました。このことで、スチュワーデスの人が代わる代わる誤りに来るので、まるでVIPになった気分でした。その後は間違いなく、トイレを利用する際には、ちゃんと介護してもらいました。 パリのシャルル・ド・ゴール空港では、空港職員が空港の車いすをもって迎えに来ましたが、介助専用で、体にあっていないのと、自分で動かせないことで、不安定でしようがありませんでした。この空港職員の人は、空港の中の「動く歩道」や通路をどんどん走るので、怖かったのですが、職員は「ノープロブレム(問題ない、大丈夫)」といって。取り合ってくれませんでした。
パリには、9日間滞在し、ノートルダム寺院やエッフェル塔、凱旋門、ルーブル美術館、オルセー美術館など、パリの名所を見物して過ごしました。移動は、徒歩やタクシーが主でしたが、地下鉄にも一度乗ろうとしました。しかし、駅のエレベーターが故障していて乗れませんでした。駅員は手伝ってくれませんでした。
毎日、歩いて見て回りましたが、パリの街は坂や石畳が多くガタガタで、平坦なところがあまりなく、9日間、兄が車いすを押してくれましたが、手に豆ができてしまいました。街中で良かったのは、「カフェ」がどこにでもあり、道端に出したテーブルでいつでもお茶が飲めたことです。日本では喫茶店が2階にあったりして、入りにくい所が多くて、結構入りづらいのです。
もうひとつ良かったのは、ルーブルやオルセー美術館が、フランス人の障害者でなくても介助者と一緒に無料で入れたことです。日本でも割引サービスがありますが、「障害者手帳が無いとだめ」だったり、半額だったりの中途半端なサービスが多いのですが、「とにかく障害者なんだから」ということで、無料で入れてくれました。
パリでは、兄がいる学生寮のような所に滞在しましたが、古い建物で、中にも段差がありました。トイレとお風呂が問題で、トイレは狭くて車いすでは、ドアが閉まらないため、開けたまま利用しました。シャワールーム(お風呂)は狭くて入れないので、部屋のお湯が出る洗面所を利用して、体を拭いたり、髪を洗ったりしました。一番困ったのは、エレベーターの大きさで、日本の小型のタイプの狭い以上に狭く、大人3人程度が入ると一杯になるぐらいでした。部屋が3階であり、それを利用しなければならないので、部屋の椅子をエレベーターに入れて、それに乗り移り、兄が車椅子をたたんでたてに持って乗り込み、利用しました。これを毎日したので疲れました。
観光ばかりだったので、フランスの障害をもつ人に対する現状はよくわかりませんでした。街は車椅子ではきついところですが、食べ物は美味いし、また行きたいと思います。

質疑応答

Q:パリの交通機関で地下鉄以外はどうなっていますか?

A:バスの入口は広かったです。タクシーは流しはありありませんが、タクシー乗り場で、運転手は、すぐに介助してくれました。車いすをトランクに入れるのも運転手がしてくれました。

PartⅡ:「空港ターミナルのアクセシビリティ」

(株)梓設計 設計本部医療福祉計画担当次長 梶原 正樹氏

仕事でヘルスケア施設の設計をおこなっています。空港ビル環境整備の分野では、アメリカが一番先行しており、特にカリフォルニア州が一番進んでいます。運輸省航空局飛行場部計画課で、日本の空港ターミナルビルのガイドラインを作成してきました。昭和57年に日本で最初のガイドラインの作成作業をしたときには、アメリカを見習って、障害者や高齢者に配慮することを提案しましたが、「日本はアメリカではないので、その時代は来ない」と一蹴されました。しかし、今日の日本は、障害者の方が旅行し、また高齢化社会へと突入する時代となりました。現在では、移動障害を前提に設計されるようになってきました。そのモデルが、新羽田空港ターミナルビルや関西国際空港ターミナルビルです。

日本の空港ターミナルビルガイドラインについて

平成3年に新ガイドラインの作成を行いましたが、運輸関係者で「バリアフリー」や「障害者への認識」の論議し、また「ノーマライゼーション」の概念を広める必要があるため、一番最初の章で、「国際障害者年とは・・・」という解説から始まっています。

国も、「(財)交通アメニティ機構」の設立や、「ハートビル法」の制定による補助金の交付などの改善も始まりました。いままでのビルは20~30年で廃棄するような使い捨ての施設づくりをしてきましたが、これからは100年単位で利用する方向に代わってくると思います。

これまでのような設計では、「バリアフリー」の概念が無いと高齢化時代では人口の25%(65歳以上の人口)の人が生活できなくなってしまいます。

昭和57年当時から現在までに、空港ビル(78ビル)の90%にエレベーターが整備されています。鉄道駅で見ると、JRの駅(4,666駅)が2.4%以下で、私鉄大手15社(1,768駅)では4.4%、地下鉄(490駅)でも22.4%となっています。

国際障害者年から10年がすぎて、近年やっと生活の環境整備を急速に始めるようになりました。しかし、アメリカのADAに比較しての日本の水準を松・竹・梅の段階で言いますと『梅』程度で、25年位は遅れていると思います。

ADAの公共交通部門の空港ビルの条項には、新設のビルでは8項目(8番目は現在未決定)の整備基準があります。

  1. スロープ・エレベーター等を設ける場合は、待合室などの近くに設置し、動線は、一般の乗降客と同じか、近似したものにする。
  2. 入口からの動線は一般乗降客と障害者を一致させること。違う場合は案内表示を設ける。通路は極力広く確保する。
  3. チケットカウンターの周りは、広く利用できるようにする。
  4. エリアごとに公衆電話を設置し、4台に1台は聴覚障害をもつ人に対応させる。
  5. 手荷物預りや手荷物検査は、動線の適正な位置に設置し、通路幅は車いすに支障無いようにする。
  6. 放送情報は同レベルの文字情報を提供する。
  7. 時計は、文字と針が明確に見えるもので、コントラストがはっきりしていること。

ADAは、加齢にともなう障害も含めて考えているため、実に細かく、しつこく規定をもうけています。

アメリカの空港の現状について

次にスライドを見ながらアメリカの空港の現状を説明します。

ロサンゼルス空港には、航空会社ごとに7つのターミナルビルがありますが、入り口には段差がありません。また、各ターミナルビル間には無料のシャトルバスが運行していますが、車いす用リフトが付いています。市内への交通も市のサポートにより障害者に対しては必要に応じてリフト付バスで迎えに来る場合もあります。

デルタ航空のターミナルビルですが、エレベーターなどの大きな表示がありますが、字の大きさや色も決まっています。この様な整備は、法律によって定められていますが、従わない場合、新聞への公表や税金の増額、また逆に整備状況が良いと税金の減免があります。駐車場へは直結しており、自動車を利用する人への配慮がされています。スロープはゆるやかに設けられています。電光表示は、赤やオレンジの見やすい色で、7㎝以上の字の大きさがあります。通路幅が広く、設置している椅子のレイアウトも決まっています。公衆電話にはTDD(文字をタイプで入力し、返事を画面に表示する電話)が設置されています。トイレには男女別に奥に車いすトイレが設けらています。また、子供用に低い小便器もあります。小さい子供も、障害をもった人と同様に捉えられています。この様なトイレは、シャフトが壁の中にあり、後で改造しやすくなっています。歩行障害者のために場内用のカート貸出もあります。表示も各国語対応になっています。

搭乗ゲート周辺では、飛行機の機種により床高に差があるので、ボーディングブリッジの床勾配を変えないように、駐車場にマーキングがされています。空港内には、メディカルクリニックがあり、医者と看護婦が常駐し、ドクターズカーも整備されています。駐車場には、障害者用駐車スペースが200台分以上(空港全体で)あります。この場所にとめるための障害者使用の車の認定証も発行されています。

カリフォルニア州では、16人乗りのバス全てリフト付仕様であり、また、16人乗り以下を運行している会社には1台以上のリフト付車両の保持義務があります。(1996年までに)。観光地などもADAに基づいて整備がすすんでいます。

国内空港の事例

次に日本の新千歳空港の例ですが、ターミナルビルの真下地下2階に列車が入っています。これは交通アクセスとしては便利なのですが、ホームからのエレベーターが、なぜか地下1階の緑の窓口事務カウンターの奥にある。この場所の階段の段が見えにくい。また、建物の案内図がパステルカラーになっていて見にくい。公衆電話には台が無くて荷物が置けない。車いす用トイレは男女一緒に設けられており、表示が見にくい。一般用トイレにも、便座に手摺がなく、入口の幅が52㎝しかなく、荷物を持ったままでは入れない。ボーディングブリッジの勾配がきついなどの問題点があげられます。

新羽田空港ターミナルビルの例ですが、整備担当(東京モノレールと空港ビル)ごとに設けた誘導(点字)ブロックの動線がずれてしまっている。案内図は、やはりパステルカラーで見にくい。パステルカラーというのは、高齢者への見える配慮に欠け、特に白内障の人は、黄色の色は白色に見えてしまいます。出発ロビーには「動く歩道」がありますが、利用者からは狭いという苦情があります。2人が並んで歩くには、幅が120㎝以上が必要と思います。自動販売機は表示が見にくく、取り出し口が低いため、取り出しにくい。今は取り出し口が高い位置にある機種もあります。トイレには子供用の小便器がありません。ボーディングブリッジは勾配が1/13で、ややゆるやかになりました。全体としては長く使おうという意識があり、ややよくなっています。

日本とアメリカを比較しますと、アメリカでは、障害者用の案内パンフレットも整備されています。社会資本の整備をする際にアメリカでは、議論をしてから造っている。結果として、いいものが出来上がると思います。

新ガイドラインが平成4年から作成されましたが、「みんなが使いやすい空港」を目標に、考え方の基本はADAを踏襲しています。これらが現実に反映されたのが、新羽田空港ターミナルビルや関西国際空港ターミナルビルです。

これからは、自力で飛行機に乗れることが目標になってきます。ボーイング747ダッシュ400型には、機内に車椅子トイレが設けられています。昭和58年に空港用車いすができるまでは、背負って搭乗していましたが、今アメリカでは、自分の車いすを機内で利用するようになってきています。

質疑応答

Q:成田空港の第1ターミナルビルの改装の内容はどうなっていますか?

A:私はスタッフではないけれど、職員が障害の疑似体験を実施しながら、現在設計中と聞いている。物理的経験は本を読んだだけではわからないので、問題点を認識したと思う。

Q:ロサンゼルス空港は使い勝手は良かったが、アメリカ国内の長距離列車を利用する際に、ホームまではアクセスがいいが、車両は高く、通路が狭いのでは?

A:ADAの交通におけるポイントは、日常生活エリアと自動車になっている。一時期列車交通が落込んだ時期がある。ADAにも列車に関するガイドラインがある。整備までの猶予期間は日常生活関連は3年間だが、列車は5年になってる。

Q:ロサンゼルスとサンフランシスコ以外の空港の事例は?

A:航空会社が4社から5社以上はいっている空港は、ADA施行前に整備がすすんでいる。ジェット旅客機が飛んでいるところは整備がすすんでいるが、全体の空港数の割合としては1/2以下でADAの水準をクリアしていると思う。

Q:日本でもボ-ディングブリッジと車椅子トイレの改装はどうなっているか。また、改装目標は?

A:国内のターミナルビルの運営は第3セクターなので、整備のスピードはゆるやかです。一般と同じ動線で動けるように、エレベーターを現状1台に加えてもう1台増やすという動きがある。車いす用トイレはあるが、設置場所が問題。適切でない所にある空港もある。ターミナルビルが古くなってきているので、順次仮装している。平成10年程度までには整備が高水準に進むと思う。アメリカでは、州か国がターミナルビルを整備している。

Q:車いす体験をしてもらったことがあるが、実際に利用している人はいろいろ不安があるのに、実感してもらえなかった。視覚障害でもいろいろなケースがある。障害の疑似体験は限界があるのでは。それだけで設計の参考になるのか?

A:羽田の時には、日本障害者リハビリテーション協会に依頼した。以前はガイドラインがなかったり、実務的に裏付のある資料が少なかった。現在はADAなどの裏付をもって作成している。

Q:私鉄の小田急とか、もともとある鉄道駅が使いたいのですが、少しずつ使いやすく変わってきていると思います。障害をもった当事者が使い勝手が悪いエレベーターなどもあります。たとえば、車いす対応エスカレーターなどは、利用が大変です。なぜ、使いにくい設備を導入するのですか?

A:バリアフリーの考え方にギャップがある。整備レベルが遅れている。外国では歴史が解決しているところもある。日本は歴史が浅い。実務レベルで整備を拒否している。金がかかるという誤解もある。日本でも京都などはすすんでいます。いままでの環境がそういうレベルだった。高齢者が増えてきて、自立してもらうには現状のレベルでは大変なのがようやくわかってきた。行政や公共交通機関の考え方も変わってきていると思います。

PartⅢ:「私と障害をもつ人と旅行」

全日空 国際線客室乗務員 中川 奈美氏

客室乗務員になったきっかけ

大学にはいったころからボランティア活動を行うようになり、卒業後も福祉関係の仕事を希望しましたが、両親に相談したところ反対されました。それで、全日空に就職し、客室乗務員になりました。就職してから1年ぐらい過ぎて、福祉活動への思いが再びでてきたときに、客室乗務員のパソコンによる点訳活動へ誘われました。

“POINTS”の活動

客室乗務員の点訳グループ“POINTS”は、機内食のメニューの点訳から始まり、1年半前から朗読テープの作成、機内に備え付け本の点訳へと広がっています。点訳したものは、機内だけの利用だけでなく、成田図書館と千葉盲学校へも寄贈しています。

実フライトにて

「手でみる世界の芸術ツアー」へ協力した際には、パーサーコールの説明、食事の際のメニュー説明、介助などをおこないました。その他、説明用の朗読テープの作成や、フライトルート地図の触地図化などもおこないました。この旅行では慣れた方が多かったので、あまり問題はありませんでしたが、一番気付いた点は、視覚障害の方は、食器を口元に持ってきて食べられるので、熱いトレー(食器)の場合はもちにくくなってしまう点でした。このフライトの体験談は職場で発表しました。
障害者団体のチャーター便に搭乗した時は、歩行障害の方が16名おいでになりました。この人数は、歩行障害をもった方の一飛行機の同乗上限と同じなので大変でした。トイレへ行かれる時間、声をかける時間、機内用の車椅子利用希望、ケアサービス希望を確認しました。どのようにケアしたらよいか、どきどきして対応をしました。乗務員同士でトイレ利用などの申し送りをして、スムーズに対応できました。

社会貢献委員会の活動

全日空の社会貢献委員会では、養護学校での英会話講師や老人ホーム訪問、盲学校へ3ヵ月に1回の訪問、地域イベントへの参加、養護学校へのクリスマスプレゼントを行ったり、チャリティーバザーの開催(今回は100万円ぐらい集まり、ルワンダなどへ寄付しました)を行っています。また、手話サークルへの参加もしています。

事前情報の必要性

客室乗務員として、よりよいサービスの提供をするには、どうしても事前情報が必要となります。ご利用の際には、できるだけご希望などをお寄せいただけますようにお願いいたします。

質疑応答

Q:点字のメニューは国際線、国内線両方にあるのですか?

A:残念ながら、国際線のみです。

Q:盲導犬と同乗する場合、グループ旅行の際に、場所が離れてしまうことがあるが?

A:盲導犬と同乗する場合は、座席の位置が決まっているので、そのような例がでてしまうのだと思います。

ページの先頭に戻る