「もっと優しい旅への勉強会」定例会報告

1994年9月 定例会の報告

日時:1994年9月22日19時12分~21時30分

会場:JTB本社3階プレゼンテーションルーム

参加者:50名

PartⅠ:「JALプライオリティ・ゲスト予約センター 半年間の業務をふりかえって」

日本航空(株)プリイオティ・ゲスト予約センター 廣井美佳氏

身体の不自由な方や病気や怪我の方の緊急輪送に対応するこのセンターが発足して8ヶ月になります。業務内容や現在の利用状況についてお話ししたいと思います。

このセンターが発足するまでは、身体の不自由な方などからの相談は各支店に分散していたたため、一つ一つの対応に時間かかっていました。そこで、窓口を一本化して、諸手配を迅速に行っていこうという方向に動きだし、今年2月1日から専門の予約・相談窓口として営業を開始いたしまいた。

この予約センターの特徴は、お客様から直接ご相談を受ける窓口としての役割とともに、社内の各部門に指示を直接与えられないという点です。これまでは何か一つ決定を下すにしても本社部門を経由しなければならなかったので、決定に時間がかかることはやむ得ませんでした。しかし、このセンターは本社部門を飛び越えて判断を下すことができるので、とにかく官僚的と言われていた日本航空としては画期的なことだと思います。

今年8月現在のお客様からの電話による相談件数は1ヶ月間で520件。平日1日あたり20~25件の相談がある計算になります。このほか、社内からの相談や旅行会社からの相談も含めると、数はもっと多くなります。 お客様からの質問内容では、人工透折に関するものが目立っています。最近は自宅療法が進んでるいるということで、旅行にでかけるケースも多く、このため旅先での医療機関のリストを欲しいというものや、空港の救護室を透折を行うために使用できないかなどの問い合わせも多くありました。

この他の質問内容をざっと述べますと次の通りになります。

  • 「知的障害をもつ者のグループの人数制限は?」
  • 「てんかんの場合、塔乗に診断書は必要か?」
  • 「自分の車いすで機内の座席まで行きたい(自分の身体に合わせたオーダーメイドのヘビーカーの様な特殊な自助具を使用している方もいる)」
  • 「喘息なので機内で吸引器を使いたい」
  • 「水ぼうそうにかかっているが飛行機に乗れるか?」
  • 「定期的に点滴が必要なのだが機内で上からつるせるか?」
  • 「機内で薬をドライアイスで冷やしたい」
  • 「導尿カテーテルを使用してるが機内で交換できるか?」
  • 「足を牽引したまま飛行機に乗りたい」

などです。

PartⅡ:「流通業におけるノーマライゼーション」
-全てのお客様を暖かくお迎えするために-

株)イトーヨーカ堂 採用教育部 ノーマライゼーション推進プロジェクト サブリーダー 小西 勝巳氏

当社は以前、障害をもった方の雇用率が低くまた、定着率が悪い時期があり、これらの改善に取り組んでいた時に、『ノーマライゼーション』という言葉を知りました。

大きな企業で、ものごとを効果的に進ませるには、企業のトップの方針が最も重要です。トップの人と機会を促らえてディスカッションをおこない、理解を深めてもらうことができました。

ノーマライゼーション推進のための悪戦苦闘の3年間のお話をしたいと思います。 イトーヨーカ堂グループ全体では、世界28か国に12,600店、従業員10万人、イトーヨーカ堂としては、全国に150店舗、従業員3万人を擁しております。フィランソロピーとしては、児童の作文や音楽コンクールを実施したり、また環境問題への取り組みとして、リサイクル運動なども行っています。

ノーマノーライゼーション推進のためには「3つの分野」を設けています。

  1. 買い物しやすい店づくり
  2. 働きやすい職場づくり
  3. 助け合う地域社会参加

また、「3つの理念」として、

  1. 人はみな障害を持つという謙虚な姿勢
  2. ハード(設備)とハート(心くばり)
  3. 相手の目の高さ、相手の立場に立つ

を提唱しています。

次に1つずつの項目について説明します。

1.買い物しやすい店づくり

お年寄りや障害者の声をお聴きしながら、まずモデル店を設け、店舗施設の改善を行っています。また、接客マナーの向上として、手話や視覚障害者の方の誘導、車いすの方の介助の学習を新人教育の必須事項として、取り入れています。その他、介護用品の専門コーナーを設けています。
モデル店での改造例を上げますと、身障者用駐車場のサインを見やすくし、スペースも2~3台分設けてます。入口等には点字ブロックを敷設し、床はフラットで広く滑りにくい構造にしています。盲導犬の受け入れも積極的に受け入れるイメージのマークに変え、触知図も設置しています。段差などにはスロープを設置し、エレベーターには低設置操作盤や音楽案内装置を付けています。また、エスカレーターの稼働方向をわかりやすく明示したり、階段の手摺も2段式にして、点字プレートも付けています。
車いすトイレはマルチタイプとして、障害者の方だけでなく、お年寄りや妊産婦の方にもご利用いただけるようにしています。レジ通路も幅を広くするととともに車いすをご利用な方の優先コーナーを設けています。
非常設備も、音だけでなくフラッシュ(光)併用型のものを採用しています。
その他にも低設置の公衆電話や、車いすでも利用しやすい自動販売機、貸出用いす常備(買い物がしやすいようにテーブル付)、杖や老眼鏡用意しております。 当社が独自に考案した設備として「ふれあい灯」というものを設けています。これは、障害者の方などがお困りなった時にボタンを押していただくとランプと音楽(エリーゼのために)により、従業員や周りのお客様からの支援を円滑におこない、安心してご来店いただくことを図っています。また、これは、児童への教育(児童によるいたずらも当初から念頭にあり、教育効果も期待している)とも考えられます。
介護用品コーナーでは、できるだけ安く商品を提供するよう心掛けています。
これらを通して得たことは、建物は最初から作れば安くすむこと、後からの改造はコスト増になるとこです。また、手話を学習することにより、障害者の気持ちを理解する切っ掛けとなりました。
日本一手話がわかる職場を目指して、30時間の学習コースを設け、手話がわかる従業員は「すこしできる(800人)」、「できる(30人)」のバッジを付けてます。ふれあいガイドとして、視覚障害者の誘導と車いす介助を社員教育の必須事項にしています。

2.働きやすい職場

障害者の方の雇用促進を図るために、雇用のための職場開発と施設改善を行っています。3年前は100人程度の雇用人数が、現在は353人を雇用しています。この内120人の方が重度障害者です。
雇用例としては、神奈川の店舗で、25歳の脳性マヒの方が接客業として入社しました。当初は、お客様への「障害」に対する反応を勝手に推測し、野菜売り場の裏で値付けを行っていましたが、本人の希望もあり、売り場に立つようになりました。お客様からの反応は非常に良いもので、地元の報道機関などでも取り上げられたりしました。また、別の店では、聴覚障害の方が売り場に従事する際に手話ができる人とペアで配属したりしたこともあります。また、車いすの女性を電話交換手として採用として際には、建物を改造し使い勝手よくしましたが、機械の操作装置だけが改造できませんでした。100%仕事がしたいという本人の希望で、職場の従業員が道具を工夫し、操作できるようにしました。
このような経験を踏まえて、人事部門に障害者雇用のアドバイザー制度をつくり、店と障害をもつ従業員のアドバイザーとして活動し、ノウハウの蓄積を図っています。このように一人一人の個性を活かすことは、人事の基本にもつながっています。
北海道の北見市にある、特例子会社「テルベ」は、農産物生産、印刷、福祉ショップのネットワーク推進を事業として、知的障害者の施設に隣接して建設をすすめてます。
「テルベで働きたい」と言ってもらえる会社になることを希望しています。

3.助け合う地域社会への参加

店舗内に「ふれあい福祉ショップ」と「ボランティア広場」の設置を進めています。ふれあい福祉ショップは、作業所で作られた製品の販売する場所が欲しいという施設からの要望で設置し、販売の場の提供と、障害者の働く場、また、ボランティア体験として販売の手伝いをしたり、ボランティアの参加の受付をするボランティア広場の機能をもっています。広さは2坪ですが売り場と什器類、売り方のノウハウの提供を通して、地域社会への貢献を図っています。作業所で作られた、エプロンやドライフラワー、木工品などを販売していますが、一般の商品より売れているものがあるぐらいになっています。

相手の立場に立つ社風をつくるために、お客様の立場、障害のある方の立場、働く人の立場を考え、地域社会と共に進んでいければと思っています。試行錯誤で行っています。一般に思われるように、障害者が入ると組織が運営しにくくなるのではなく、かえってチームワークが強くなると思っています。

質疑応答

Q:社内会議の際の手話通訳体勢はどうなっていますか?

A:手話が出来る人がいるところへ配属するように配慮している。また、ホワイトボードを用意して、わかりやすいように心掛けている。

Q:社員の通訳者には別に手当を支給しているのでしょうか?

A:社員の通訳者(手話トレーナー)の派遺は、仕事として派遣しているので、特別な手当はありません。

Q:視覚障害者にとって従業員が少ないスーパーは不安だが?

A:スーパーマーケットはセルフサービスが原則なので、確実な体勢ではないが、なるべく声をかけるように配慮している。

Q:福祉ショップの店員の給料や、場所代、また宣伝はどのようにしていますか?

A:イトーヨーカード自身が経営していない。和光店の場合は和光市社会福祉協議会へ場所を提供しているだけ。社会福祉協議会の雇用したパートが店員をしている。テナント料は無料。什器も無料でお貸ししている。電話や消耗品は社会福祉協議会が負担。売上の2割が福祉協議会、後は各作業所の売上になります。

Q:自閉症の人の雇用も考えてほしい。

A:いろいろな障害を考えて雇用を工夫したい。

Q:中途障害者などが介護ショップなどの店員をすると効果的では?

A:介護相談と赤ちゃん相談をしているが、直接利用している人が相談できればよいと考えている。

Q:人事担当にも障害者を入れてほしい。

A:同感だと思う。障害者雇用アドバイザーを募集したとき、障害をもった子供がいる社員が応募し、現在活動しています。

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