「もっと優しい旅への勉強会」定例会報告

1994年8月 定例会の報告

日時:1994年8月24日19時15分~21時15分

会場:JTB本社3階プレゼンテーションルーム

参加者:50名

PartⅠ:「ヒルトン・ホテルにおける障害をもつ人へのサービスと設備」

ヒルトン・ホテル・コーポレーション 極東地区営業本部営業支配人-アメリカ担当 青山 賢司氏

海外旅行をする人が1100万人の時代になりました。数多くの人が旅行しますが、ハンディキャップをもつ人の旅行は不便な状況です。アメリカではADA法が施行されました。障害者に対する障壁を排除し、多くの人々がやさしく旅行できる「だれでも、自由に、どこへでも」のノーマライゼーションを実行したいと思います。

一般的にヒルトンとお呼びいただいていますが、実際には2系列ありまして、ヒルトンホテルコーポレーションは、アメリカ国内の「ヒルトンホテル」と国外での「コンラッドホテル」の230軒を運営しています。また、ヒルトンインターナショナルカンパニーは、アメリカ国外での「ヒルトンホテル」と国内の「ビスタホテル」の160軒を運営しています。ビスタホテルはニューヨーク、ワシントンなどに展開しています。
今回は、“Los Angeles Hilton and Towers”(ロスアンゼルス・ヒルトン・アンド・タワーズ)を例に取って、ヒルトンにおける障害者の方への対応状況をご説明させていただきますが、最初にロスアンゼルスという街をビデオでご紹介させていただきます。
L.A.ヒルトンの障害者の方に対する対応を、ロスアンゼルスに着いた所から、順にご説明いたします。L.A.ヒルトンには、シャトルサービスはないのですが、米国内のエアポートに近いヒルトンではリフト付のシャトルバスを運行しています。この空港の駐車場は、スロープ等で段差が解消されています。ホテル入口は一般的に空調を保つために、回転ドアが多いのですが、2重の自動ドアに改造中をしています。管内のエレベーターは全てに低設置操作盤をつけ、また点字表示をしています。
障害者用客室の設備は、低位置ののぞき窓、ノックライト(ノックするとフラッシュが光るもの)、低位置の電気スイッチ、バイブレーターコール(振動式目覚まし)があります。また、バスルームには、シャワーチェアーを置き、バスタブは浅めの物を使用しています。シャワーは固定式ではなく、ハンドシャワーを使っています。お湯の温度調整は片手でできるようになっています。バスタブとトイレの周囲には、手摺りを取り付けてあります。
レストランやバンケットルームを利用する際にある4~5段の階段にはスロープを設置しています。
障害者用客室は、日本語では「ハンディキャップルーム」と呼ぶことが多いようですが、ヒルトンでは「アクセシブルルーム(Accessible Room)」と呼んでいます。L.A.ヒルトンは、約900室の全客室に対して40室のアクセシブルルームがありますが、ヒルトンホテルコーポレーションでは、今後230軒のホテルに16億円の予算で500室のアクセシブルルーム改装、エントランスや、宴会場の改良を行う予定です。1つの部屋の改装には22,000ドルの経費で改良をおこないます。

質疑応答

Q:ブレイユ点字とは

A:フランス系の呼び名だと思います。

Q:内部疾患などをもった方への対応と医療との結びつきは。

A:糖尿病などの既存症では例がありません。急病などの場合は、病院などへご案内しています。

Q:リフト付シャトルバスの利用には、予約などが必要ですか。

A:30分おきに運行しています。特に予約は必要ありません。全車にリフトを付けるように改造中です。

Q:絨毯が厚いと車いすは歩きにくいがどうなっていますか。

A:絨毯などの選択の裁量権は各ホテルのマネージャーにありますが、パブリックスペースのものは、薄くなってきてきているとおもいます。

Q:パブリックスペースの車いすトイレの割合は。

A:アメリカのホテルは、地下か2階にパブリックトイレがありますが、各トイレには必ず手摺り付きがあります。

Q:障害者客室を設置するきっかけはADA法の施行ですか。

A:ヒルトンではADA法施行以前の1989年ぐらいから着手しています。

Q:身障者客室の料金は

A:デラックスルームで200ドルぐらいです。

Q:日本だけでなくアメリカやヨーロッパの障害者の利用はありますか。またADA法施行前と比べてはどうですか。

A:日本以外にもアメリカ国内はもちろん、ヨーロッパからもリクエストはあります。ADA前と比較してもかなり増えています。

Q:利用された障害者からのクレームの例はありますか。

A:東京事務所にはありません。

Q:大会などで、障害者が多数集まる場合の対応はどうしていますか。

A:L.A.ヒルトンには障害者客室が40ルームありますので、それで対応しています。団体でご利用いただいた例もあります。

Q:障害を理由に、ことわった事例はありますか。

A:オーバーブックス(部屋数以上に予約が入ること)以外では、東京事務所ではありません。

Q:値段に対する苦情はありますか。

A:特にありません。

Q:900室に対して、ハンディキャップルームが少ないと思うが。

A:L.A.ヒルトンでは、40ルームありますが、ADAの基準では1000に対して20室が最低基準です。別のホテルでは814室に対して48室もっているところもあります。

Q:客室のキーはどうなっていますか。

A:カードキーを採用しています。視覚障害の方の場合はアシスタントマネージャーが同行して、ご案内しています。

Q:客室にテレビはありますか。また、テレビ画面に字幕表示をしていますか。

A:テレビは全室にあるが、字幕表示はしていません。テレビで館内説明を放映していますが、字幕は付いていません。

Q:日本人の場合、湯船に浸かって利用すること希望する例が多いと思いますが、そのことへの対応はどうされていますか。

A:基本的には、椅子に座ってシャワーを利用されることを前提にしています。

Q:緊急事態の伝え方はどうなっていますか。ナースコールのようなものはありますか。

A:セキュリティーには簡単にかけられるようになっているが、ダイヤル式でワンタッチボタンではありません。障害者の方がお泊まりの場合は、セキュリティーに連絡して、緊急時や電話があれば、すぐに部屋へいくようにしています。

Q:視覚障害者の人向けのサービスは。

A:盲導犬を伴っての利用は可能です。また、エレベーターのボタンに点字標示をしています。その他のサービスについては不明です。

Q:ホテル案内(ダイレクトリー)の点字化はされていますか。

A:まだ用意はしておりません。今後の計画については調べてみます。

Q:手話通訳ができる人は。

A:L.A.ヒルトンには何名かのスタッフに手話が出来る人がいます。日本のヒルトン・リザベーション・ワールドワイド(予約センター)にも1名おります。

Q:従業員教育はどのようにおこなっていますか。

A:フロントオフィスミーティングを1週間に1回行っていますが、その中でケーススタディ形式で障害者への対応の仕方を勉強しています。最終的には一人一人のスタッフの自覚だと思いますが、マニュアルも作成しています。

Q:障害者の従業員としての雇用の状況はどうですか。

A:障害を理由に採用を断ることはありません。現に働いている人もいます。ホテルはいろいろな仕事があるので、適材適所で働けると思います。

PartⅡ:「航空機利用の際の質問票と診断書の提出について」

日本航空(株)サービス委員会 藤原公彦氏

勉強会でもご質問のあった「質問票と診断書」については、お客様からの指摘やクレームも多く、社内では、以前より問題点の一つとして改善策を検討してきました。

「質問票と診断書」については、骨子がIATAの規則で定められており、その基準に沿って作成されています。ですので、改定にあたり、一社が独自の判断で内容を変更することは出来ません。今回の場合もIATAの会議にかけて内容変更が承認されたものです。更に、使い勝手を考慮して、JAL、ANA、JAS、JAAの国内4社間で共通フォームに統一すべく検討してきました。結果的には4社の対応が異なるということで、統一フォームにはなりませんでしたが、JALの場合は、現在、社内の医師のアドバイスや社内連絡部と調整を図りながら改訂作業を行っています。この様な手順を踏んでいますので実施が遅れ、ご迷惑をおかけしています。9月か、遅くとも10月には、実施できる予定です。

質問票についてですが、本来、障害や病気をお持ちの方々が航空機をご利用される場合に、航空会社がお客様に安心してご利用いただくための様々な事前手配のためにご記入いただいているものです。また、診断書はこれらのお客様の中で、ご旅行に際し、医師の診断書が必要な病状のお客様にご記入、ご提出いただいている書類です。

現状の問題点としては、この2種類の書類が一部になっており、記入対象者および記入箇所が不明確で、病状が安定し、ご旅行に際し特に問題ないお客様にも必要以上のご質問をして、不愉快な思いや不便をおかけしていたのではないかと思われます。今回の改訂は、それらの内容を総合的に見直す予定です。

具体的には、

  1. 質問票と診断書を分離し、間違いや誤解が発生しないようにする。
  2. 質問票については症状が安定し、医師の診断を必要としなければ、特に質問票の提出を必要としなくてもよくなります。予約の時点で必要情報をいただければ結構です。
  3. 診断書については、以前と記入条件は変わっていませんが、ご旅行に際し、医師の診断を必要とするお客様のみご記入いただきます。医師がお客様のご旅行の可否を判断し易いように、説明を加えてあります。
  4. 新フォームでは、極力、不必要な質問を省き、表現についても誤解を生じないように、変更してあります。

現在、「質問票と診断書」の改訂と同時に別の作業も進めていますので、簡単にご案内いたします。

一つは、「障害や病気をお持ちのお客様への案内パンフレット」の作成作業を実施しています。2月からスタートしたプライオリティ・ゲスト予約センターが順調に推移していることもあり、以前にもまして障害者の方や旅行会社あるいは医療機関から問い合わせやパンフレットの送付依頼が多く、必要な情報を網羅すべくお客様用案内パンフレットの作成作業を急いでいます。

更に、障害をお持ちの方でも、症状が安定しているお客様で、たびたび、JALをご利用いただいているお客様のために障害あるいは症状のデータ「登録制度」を検討しています。外国他社では、「FREMEC」という名称で既に実施している会社もあるようですが、それと同じ意味合いのものとお考えください。一度データをご登録いただければ、次回からは登録番号のみで、ご予約、ご搭乗が可能になります。

「質問票と診断書」の改訂および「登録制度」についても、パンフレットの中でご案内させていただく予定です。いずれも、9月から10月には実施できる予定ですので、改めて勉強会でもご案内させていただきます。

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