「もっと優しい旅への勉強会」定例会報告

1993年3月 定例会の報告
「フレッシュパーソンの考え、思い」

講師:大学4年生の皆さん
吉田 岳史(法政大) 後藤 晶子(関東学院大) 井内直弘(武蔵工大)
中谷 協子(東洋大) 神谷 貴世子(明治大) 田中弘子(法政大)

日時:1993年3月17日(水)19時05分~21時30分

会場:JTB本社3階プレゼンテーションルーム

参加者:50名

今回は、今春新社会人となる、大学4年生の皆さんから、卒論等を通して考察した事柄や勉強会への意見を伺いました。

最初に演壇に立ったのは日本旅行に内定している法政大の吉田君。
卒論のテーマは「優しい旅への出発点」。勉強会の名称にヒントを得たというタイトルで、「出発に際して」という序章で国連障害者の10年を概観、「ノーマライゼーションの原理と障害旅行者の20年」で障害者旅行の歴史を繙き、「障害別に見た海外旅行における問題点」と各論を展開。アメリカ、イギリス、スウェーデンなど海外にも視野を広げ、最近の活題としてJTBワールドの“同意書問題”にも言及したそうです。卒論では、歴史という縦軸に加え、海外の交通政策を横軸に、議論を展開、バンクーバーで撮影した写真なども紹介してくれました。「文字で書かれた資料だけでなく、勉強会に出ることで障害者旅行を肌で感じることができた」とは本人の弁です。将来は、学んだことを仕事にも生かして行きたいと決意を表明してくれました。

自らの就職活動をベースに「障害者の雇用」問題を卒論のテーマに選んだのは、後藤晶子さん。
30社を越す会社訪問先(会社訪問したのではなく電話で「車イス使用者の採用は可能か?」と問い合わせたのが30社以上です。実際、会社したのは3社です)のうち、半数は「車椅子だから」という理由だけで門前払い。こうした経験をバネに卒論に取り組みました。しかし、内定した三菱電機のコンピューター製作所では、車椅子使用の障害者は自分が第一号であり、後輩者のためにここで道を切り開いて行きたい、との抱負を聞かせてくれました。勉強会との出会いは、宝島探検隊のハワイ旅行。海外旅行も初めてなら、親と離れるのも初めてという旅行で大きな自信を得ることができたようです。最近では、井内君らとともに出掛けたマレーシア旅行で、「ハードの不足を補うソフトに充実に感激」勉強会には「これまで取り上げられることの少なかった旅行・レジャーの問題を取り上げており、これからも楽しく生きるハリを提供して下さい」との注文をいただきました。

武蔵工大の井内直弘君は、海外旅行経験6回の自宅のパソコンから海外のホテルをブッキングしてしまうほどのコンピューターオタクです。
就職先は日本IBMというから一同納得。旅の方でも大変なマレーシアフリークとかで、現地の流行曲新譜もチェックしてしまうこと。後藤さんらと連れ立って出掛けたマレーシア旅行も「何も問題は無かった」そうです。空港では係官から「君、去年も来たね」と声をかけられたとか。「旅行の経験が自信につながっている」様子が伝わってきました。勉強会に対しては「土、日に開いて貰えませんか。」との要望。検討してみる必要がありそうです。

中野区のボランティアサークルで障害者とともにスポーツを楽しむ中谷協子さんもやはり、卒論で障害者問題を取り上げました。
障害者旅行の歴史、その効用、航空会社、海外アクセス、これからの課題と流れるような展開で障害者と旅行の問題を考察。卒論で障害者問題を取り上げました。卒論執筆のためにヒアリングに出掛けた石坂さんから「設備より人の心の方が大切だ。」と言われたことが、心に残ったとか。彼女自身の「障害者が一日一回外出することが、社会への問題提起となっていると思います。(キッパリ)」という言葉も印象的でした。「障害者と健常者に同じ教育を与えるべきでないでしょうか。」という提言も、彼女のこれまでの活動、勉強の成果を考え合わせるとき、重いものがあるような気がします。

遠縁に小児麻痺の女性がいたという神谷貴世子さんは、高校生の頃から手話を習うなど、障害者との付き合いを日常的なものとして育って来たそうです。
こうした経験は日本では、恐らく稀なことでしょうが、「ハワイでは車椅子や老人がとても多かった。」という感想を聞くとき、どんどん社会に出てくる障害者自身の姿勢、それを受け入れる社会の姿勢、その両方に彼我の違いを感じない訳にはいきませんでした。就職先のJTBで、旅行に行きたい時行ける人だけでなく「旅行に行きたくても行けない人の手伝いができたら。」と希望を語ってくれました。

名鉄観光に就職が決まった田中弘子さんは、肢体不自由児協会の山中湖キャンプを始め、豊富で様々な活動を通じて、「人に迷惑をかけちゃいけない、と考えるあまり、車椅子でどんどん外に出て行こうと考える人が少ないように思う。(そんな風に考えなくてもいいのに)」と経験を基に訴えました。
それは、実際に外に出て見ること、行動して見れば、ほんの少しの工夫や少しの手助けで実現出来るはずだと力説。その気持ちは、「仕事に就いたら一人でも多くの人に旅行を楽しんでもらえたらいいなと思います」という決意にも現れていたような気がしました。また、勉強会で交換されるような情報がいつか人々の“常識”になって行ければ良いのに、とも。卒論では中谷さんと同じテーマを取り上げました。

以上の報告を聞き、参加者からは「大学生がこんなにしっかりしているとは思わなかった」「皆さんの発表を聞いて感動した」「卒業おめでとう。そしてその気持ちを会社で生かして」「自分の若いころを思い出した」など活発な賛辞の言葉が寄せられたことを併せてご報告しておきます。

以上

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